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メディカル・ジャスティスによる移民収容施設に関する初の年次レビューでは、継続的な安全対策の失敗が浮き彫りになった。

公開日
2025-07-31
メディア
Electronic Immigration Network
記事要約
イギリスのNGO「Medical Justice」は、移民収容における医療と被害の実態を明らかにする初の年次報告書を発表した。この報告書は、2024年中に支援した73名のクライアントに関する臨床データと証言に基づいており、今後の継続的な検証のための重要な基盤とされる。

報告書は、2024年の移民収容センター(IRC)において、深刻な虐待や劣悪な環境が続いていることを指摘しており、とくに「Harmondsworth IRC」では、英国刑務所・収容施設監察官が「これまでで最悪の状態」と評価している。

調査対象者のうち82%が拷問の被害者、63%が人身売買の被害歴を持ち、91%がPTSDの症状を示していた。約4分の1は自傷経験があり、75%以上が自殺願望を訴えていた。にもかかわらず、最長で2年間も収容され、最終的には90%が解放されたことから、Medical Justiceはその収容の正当性に疑問を呈している。

特に批判の対象となったのは、収容中の脆弱な人々を保護するために設けられている「Rule 35(規則35)」の運用である。この制度は、心身に被害を受けるリスクがある収容者を医師が報告し、内務省に判断を促す仕組みだが、報告の質が低く、実施も遅れており、効果的に機能していないとされる。中には自殺未遂後も2週間以上診断が行われなかった事例もあった。

また、収容施設での医療体制の質にも重大な問題があると指摘されている。PTSDなどの精神疾患の診断漏れが相次ぎ(47件)、31人については重大なPTSDが見過ごされていた。心理療法の提供は極めて乏しく、対処として薬の処方だけがなされる例が多かった。Medical Justiceの医師から提出された71件の医学的所見と勧告についても、収容施設側で具体的対応が確認できない事例が多数あった。

総じて、Medical Justiceは、移民収容制度は「修復不可能なほど壊れている」と結論づけており、現行の保護制度では脆弱な人々を守ることはできず、彼らは孤立したまま長期間拘束されていると警鐘を鳴らしている。適切な支援や法的代理、通訳がなければ、脆弱な人々が見落とされ、不当な収容が続く可能性が高い。

さらに、報告書は2025年の労働党政権下における政治的動向や政策により、収容者数が今後増加する恐れがあると警告しており、それに伴って法的支援を受けられないまま、脆弱な人々が危険な状態で迅速に国外退去させられるケースが増える兆候がすでに見られるとしている。
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