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アメリカは1920年代の移民政策の失敗を繰り返すかもしれない

公開日
2025-10-25
メディア
Bloomberg
記事要約
米国のトランプ政権が、英語話者やヨーロッパ人、白人南アフリカ人を優遇する形で難民制度を抜本的に見直す「白人優遇的」な移民政策を検討していると『ニューヨーク・タイムズ』が報じた。この動きは、トランプ前大統領の差別的な発言の延長というより、1920年代に実施された人種的に偏った移民制限政策の再来を示すものと見られている。

第一次世界大戦以前、米国は中国人排除法を除けば移民をほとんど制限しておらず、エリス島での入国拒否はわずか2%だった。しかし19世紀末以降、移民の中心がアイルランドやドイツなど北西ヨーロッパから、東欧や南欧のユダヤ人、スラブ人、イタリア人へと変化すると、WASP(白人アングロサクソン・プロテスタント)層の間で「人種の自殺」への恐れが広がった。こうした不安を体系化したのが1916年出版のマディソン・グラント『偉大な人種の消滅』であり、ヒトラーも「聖書」と称賛した。この書は「北欧系人種の優位」を訴え、異民族との混血が文明の崩壊を招くと主張した。

この思想に共鳴した政治家たちは、1917年にアジアからの移民を禁じ、読み書き試験を課す法律を成立させた。続く1921年の法律では、1910年国勢調査を基に各国移民数を3%に制限。さらに1924年の「ジョンソン=リード法」では、基準年を1890年にさかのぼらせ、東欧・南欧系移民を事実上締め出した。たとえばイタリアからの移民は年間10万人超からわずか3,854人に、ロシアは9万人超から2,248人に削減された。議会では「純粋なアングロサクソンの血を守れ」という発言も公然と行われた。

この政策は悲劇的な結果をもたらし、ホロコースト期にはユダヤ人難民の受け入れを事実上拒むことになった。1965年の移民法改正までこの人種的制限は続き、その後ようやく多様化が進んだ。しかし、近年の移民増加は再び排外的な反発を呼び起こし、歴史が繰り返されている。

筆者は、トランプ氏の構想がグラントらの思想を復活させるものであり、もし実現すればその悪影響は長期的に残ると警告している。
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