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学術報告書が移民法と人権法に関するメディア報道の不正確さを暴露

公開日
2025-09-08
メディア
Electronic Immigration Network
記事要約
オックスフォード大学のボナヴェロ人権研究所が発表した報告書によれば、英国メディアは欧州人権条約(ECHR)と移民問題に関して、多くの誤解や誤報を含む報道を行っているとされる。この研究は、2025年上半期に報道された379本の記事を分析し、75%以上の記事が移民とECHRに関連していたことを明らかにした。特に、外国人犯罪者の送還をめぐる報道において、判決理由を誤って伝えたり、既に上級審で覆された判決をそのまま報道したりするケースが多かった。

報告書では、メディアがしばしばECHRや欧州人権裁判所の役割を誤って伝え、あたかも人権法が政府の移民管理を妨害しているかのような印象を与えていると指摘されている。実際には、ECHRが送還を阻止できるのは、拷問や迫害の危険がある場合、あるいは家族関係に深刻な影響が出ると認められるごく限られた場合のみである。しかも、人権に基づく控訴の成功率は極めて低く、統計によると、外国人犯罪者が人権を根拠に送還を免れたケースは0.73%にすぎない。

誤報の代表例として、「子どもがチキンナゲットを好むため父親の送還が阻止された」という報道があるが、これは事実と異なり、判決の本質を無視した誤った伝え方だった。また、パレスチナ人男性が家族を英国に呼び寄せた事例も、「ウクライナ家族制度を悪用した」との報道がなされたが、実際の判決はガザでの人道的危機を考慮した上でのものであった。

報告書は、こうした誤報が人々の人権に対する理解を損ね、司法制度への信頼を揺るがすと警告する。加えて、裁判官やその家族に対する安全リスクも高まっており、最高裁長官のキャー判事もその危険性を指摘している。

メディアの誤報が広がる背景には、政府による明確な統計や情報の不足もある。報告書は、内務省に対して、控訴審の結果や人権関連の判決に関する透明なデータ公開を求め、根拠ある議論と政策形成の必要性を訴えている。報告書の著者らは、ECHRに関する議論が正確な法理解と事実に基づくものでなければ、民主主義と法の支配が損なわれる危険があると強く警鐘を鳴らしている。
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