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英国移民制度のコントロール回復:政府の白書からの主なポイント

公開日
2025-05-27
メディア
Fox Williams
記事要約
英国労働党政権は、「移民制度の統制回復」と題したホワイトペーパーを発表し、純移民数の削減と外国人労働者への依存軽減を目的とした広範な移民制度改革を提案しました。これらの改革案はまだ議会で審議中であり、具体的な施行時期は未定ですが、政策の方向性は明確で、基準の引き上げ、コンプライアンスの強化、国内人材の活用促進が柱となっています。

まず、スキルドワーカービザの条件が大幅に厳しくなり、必要なスキルレベルがAレベル相当(RQFレベル3)から大学卒業相当(RQFレベル6)に引き上げられます。これにより、これまでビザ取得が可能だった多くの職種、特にホスピタリティや運輸関連(例:シェフや船員など)が対象外になります。給与基準の引き上げも予定されており、現行のショートエージ職業リストは廃止され、代わりに短期的に人手不足と認められた職種に限定した「一時的ショートエージリスト」が導入されます。また、英語力の要件も引き上げられ、本人や扶養家族に段階的に高い言語能力が求められるようになります。

介護分野では海外からの人材採用が2028年までに段階的に終了する方針であり、既存のビザ保有者には一部延長や職種変更の猶予が与えられます。こうした動きは、移民政策と国内労働力の計画をより密接に結びつけるためのものであり、労働市場証拠グループの設立や、各業界に対する人材育成計画の策定義務が盛り込まれています。

スポンサー制度の見直しでは、雇用主の責任が強化されると同時に、被雇用者がより自由に雇用主を変更できる仕組みが検討されています。また、悪用の懸念がある家事労働ビザの制度も見直しの対象となります。

一方、優秀人材の誘致には前向きで、AIやライフサイエンス分野など成長産業向けの「グローバルタレントビザ」の拡充や、企業内転勤ビザの枠拡大など、投資促進を目的とした措置も打ち出されています。

学生ビザ制度も厳格化され、教育機関にはより高いコンプライアンス水準の達成が求められ、卒業後の就労ビザは2年から18か月に短縮される予定です。これに加え、留学生収入に対する課税が導入され、それを高等教育とスキル育成に再投資する仕組みが構想されています。

テクノロジーの活用も進められ、eビザや電子渡航認証(ETA)の導入によって、ビザ管理や違法就労の監視体制が強化されます。また、違法労働に対する罰金の増加や、銀行・金融機関のコンプライアンス義務の拡大も含まれています。

永住権や家族制度に関しては、新たに「Earned Settlement」制度が導入され、通常の永住申請要件が5年から10年に延長されます。ただし、高度貢献者には早期永住の道も用意されます。また、「Earned Citizenship」モデルが導入され、「ライフ・イン・UKテスト」の改訂や、ポイント制による市民権取得ルートも検討されています。

これらの変化を受け、企業は今のうちに既存のビザ申請を加速し、スキル・給与基準の引き上げに備えるとともに、採用や人材定着のための戦略を見直す必要があります。また、コンプライアンス体制の強化や、制度変更が自社の外国籍従業員に与える影響の精査と対応も急務となっています。
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