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英国で最も厳しい移民問題を訴える政治家が、なぜ有色人種であることが多いのか

公開日
2026-01-30
メディア
ALJAZEERA
記事要約
サジド・ジャビド元英国内相が「自分の両親は、現在の基準では英国に入国できない」と語った発言は、偶然ではなく、近年の英国移民政治の中核的な考え方を示している。彼は、非熟練労働者や英語能力のない移民の受け入れに反対し、移民数の削減や英語要件の強化、熟練労働者への限定を明確に主張した。

こうした強硬な移民政策を前面に出してきたのは、ジャビドに限らず、少数民族出身の政治家が英国内相を務めるケースが続いている点が特徴である。2018年以降、保守党政権下ではジャビド、プリティ・パテル、スエラ・ブレイバーマン、ジェームズ・クレバリーが、続いて労働党政権ではシャバナ・マフムードが内相に就任し、いずれも厳格な移民管理を進めてきた。

パテル政権下ではポイント制移民制度が導入され、難民申請者をルワンダに送還する構想が進められた。ブレイバーマンは送還強化を公然と称賛するなど、発言は過激化した。一方で、移民数自体は増加しており、強硬な言説と現実の結果には乖離があった。

筆者は、この現象を個人の出自や信条だけで説明するのではなく、政党が移民規制を強化する際、少数民族政治家を「レピュテーション・シールド(批判避け)」として前面に立てる政治的合理性があると分析する。移民政策が歴史的に人種と結びつけられてきた英国では、少数民族政治家が厳格政策を推進することで、批判を「人種差別」ではなく「政策論争」に転化しやすくなる。

この構図は現在、労働党にも及んでいる。スターマー党首の下で内相に就任したマフムードは、亡命から永住への道を厳格化するなど「一世代で最大の亡命制度改革」を掲げ、移民・亡命政策の引き締めを進めている。彼女は、移民の急増が地域社会の不安や不公平感を招いていると主張し、右派からは評価される一方、左派からは移民のスケープゴート化だと批判されている。

少数民族政治家は単なる象徴ではなく、「公平性」「法の順守」「正規ルート」といった言葉で厳格政策を正当化する役割を果たしている。こうした言説は、露骨な人種論から距離を置きつつも、英国の人種化された移民政策の歴史と切り離されてはいない。

結論として、英国で少数民族政治家が移民規制強化の先頭に立つ現象は矛盾ではなく、政治的正当性を確保するために代表性が戦略的に用いられている現実を示している。移民排除を前提とする制度の道徳的・社会的影響を、こうした「正当化」がいつまで覆い隠せるのかが、今後の大きな課題である。
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