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英国の問題は移民ではない。信頼の根深い崩壊だ

公開日
2025-11-23
メディア
The Observer
記事要約
英国のシャバナ・マフムード内務大臣は、議会で自身が日常的に「パキ野郎」「国へ帰れ」と罵られている経験を示し、難民・庇護問題がいかに社会を分断しているかを訴えた。しかし筆者は、こうした人種差別の経験を理由に、マフムード氏の強硬な庇護政策を正当化することには反対する。差別を受けることと、庇護制度を厳しくすることは別問題だという立場だ。

前政権が庇護申請の処理を事実上停止したことで大規模な backlog(未処理案件)が生まれ、ホテル収容の増加や貧困地域への集中配置など現制度の混乱が起きており、改革自体は必要だと筆者は認める。しかし、黒人・アジア系英国人への差別を理由に庇護政策を厳しくすべきだとする議論は、過去に移民排斥を正当化してきた主張と同じ構図だと批判する。

記事は、現在の移民への敵意や言説(「侵略者」「大量送還」「白人の衰退」など)が、移民数そのものよりも社会的不信の広がりに根源があると指摘。欧州社会調査(ESS)の研究によれば、移民への敵対心を強く左右するのは「移民の多さ」ではなく、「社会的信頼」「制度への信頼」「腐敗の少なさ」「社会的包摂」などであり、移民の少ない国ほど反移民感情が強い傾向にあるという。

人々の怒りの出発点は、戦後の社会契約の崩壊、政府の無策による貧困・住宅難・賃金停滞などの構造問題であり、小型船による越境とは無関係に長年積み重なってきたものだと筆者は述べる。移民問題をスケープゴート化する政治は、こうした根本原因を覆い隠し、解決を遠ざけると警告する。

マフムード氏の新政策は「ボートを止める」ことにも成功しない可能性が高く、たとえ成功しても、一般の不満や不信を癒やすことにはつながらないと筆者は結論づけている。
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