世界の移民・難民
関連ニュース

(Novaya Gazeta Europe)「有力な根拠があっても、認められないことがある」EUの移民制度改革により、ロシア人が政治亡命を事実上不可能にされた経緯

公開日
2026-09-04
メディア
Novaya Gazeta Europe
記事要約
EUでは2026年6月12日から、新たな共通移民・難民制度(AMMRを含む新制度)が本格施行された。大きな変更点の一つは、EU域外国境で7日間の予備審査を行い、難民認定の可能性が低いと判断された申請者を、原則3か月以内の「迅速手続」に振り分ける仕組みである。対象には、安全国出身者や必要な情報を提供しない者に加え、EUでの難民認定率が20%未満の国の出身者も含まれる。ロシア人の2024年の認定率は18.1%だったため、ロシア人申請者も迅速手続の対象となり得る。

新制度では、従来のダブリンIII規則も見直され、最初に入国したEU加盟国だけに難民申請の負担を集中させず、加盟国間で申請者を分担する仕組みが導入された。一方、加盟国は申請者を受け入れる代わりに、1人当たり約2万ユーロを支払うこともできる。この改革は、イタリアやギリシャなど国境国への負担を軽減し、EU全体で「秩序と管理」を強化することを目的としている。

しかし、人権関係者は、特にロシアの政治的迫害から逃れてきた人々への影響を懸念している。従来は審査に1~2年以上かかる場合もあり、その間に証拠を収集したり、NGOや弁護士の支援を受けたりすることができた。迅速手続ではその時間が大幅に短縮され、面接時に十分な証拠を提出できなければ、本来は有力な案件でも不認定になる可能性がある。さらに、不服申立ての期間も短縮されるため、行政機関による不十分な審査を裁判で修正する機会が減ることも懸念されている。

また、ロシア人の多くがジョージア、アルメニア、トルコなどを経由してEUへ入国しているため、「安全な第三国」や第三国との「つながり」を理由として、EUが難民申請そのものを審査しない可能性も指摘されている。迫害の事実が十分に存在していても、入国経路の説明、日付、書類などの形式的な問題によって保護を受けられなくなる危険がある。

さらに、国によってロシア人の難民認定率に大きな差があり、10%未満の国から約25%に達する国までばらついている。それにもかかわらず「20%」という一律の基準で迅速審査の対象を決めることについて、制度の硬直性が問題視されている。新制度自体も複数の規則や例外が複雑に絡み合っており、行政機関や裁判所の裁量が拡大する可能性がある。

記事では、オランダ、フランス、スペインで難民申請を行ったロシア人政治亡命者の事例も紹介されている。彼らは反戦活動、政治活動、LGBTをめぐる迫害などを理由にロシアを離れており、審査に数年を要したり、申請予約や弁護士確保に苦労したりしている。6月12日以前に申請した人の中には旧制度の適用を期待する者もいる。

記事が最も問題視しているのは、難民審査の「迅速化」そのものより、国籍別の平均認定率などを基準として個々の申請を機械的に迅速手続へ振り分ける制度の硬直性である。移民管理の効率化を進める一方で、政治的迫害を受けた個人の事情を十分に審査する時間と不服申立ての機会をどう確保するかが、新しいEU難民制度の大きな課題となっている。
タグ
欧州全体

「欧州全体」を含むニュース記事一覧

公開日
記事のタイトル
タグ
2025-11-14
欧州全体