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移民政策が難しい理由 ― 「地獄の輪」から抜け出すためのガイド

公開日
2025-11-28
メディア
Financial Times
記事要約
英経済学者アラン・マニングは、新著『Why Immigration Policy Is Hard』で、移民政策の難しさと複雑さを分かりやすく整理している。元英政府・移民諮問委員会(MAC)委員長として、学術的知見と政策現場の両面を知るマニングは、移民に賛成・反対の立場を問わず、多くの人が自分に都合の良い証拠を誇張し、具体的な政策案は曖昧だと指摘する。この“曖昧さ”が、国民の不信感や極端な議論を招き、移民政策はしばしば“悪循環(infernal circle)”に陥るという。

マニングによれば、移民のメリット・デメリットは単純ではなく、豊かな国は全ての希望者を受け入れられない以上、どこに「道義的な境界線」を引くかという選択が不可避である。よくある主張――「高齢化対策のために移民が必要」や「移民が生産性を高める」など――も過大評価だとし、実際には他の政策(例:年金改革)の方が高齢化対応として有効であり、移民の受け入れが賃金や物価を大きく動かす証拠も乏しいと述べる。

むしろ、低賃金労働に従事する移民を受け入れる場合、移民本人は合理的に利益を得る一方で、受け入れ社会内の不平等が拡大するという不都合なトレードオフが存在する。だからこそ政府は、高技能人材に重点を置いた選択的なビザの設計を行い、「問題が起こり得る点」を常に念頭に置くべきだと主張する。

最も政治的に争点となっているのは難民政策であり、現行の「到着国が責任を負う」方式は、効率が悪く不公平で、強制的な抑止策に多額の資金が浪費されている。マニングは「各国間で受け入れを分担する新制度」を提案するが、現実的な国際協力には程遠いと認める。

結論として、ポピュリズムを抑えるためにも、政治家は有権者が納得できる持続可能な移民政策を打ち立てる必要があり、現状より良い制度を作る余地は確実にあるとマニングは強調している。
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