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移民召喚令状の権限

公開日
2025-12-20
メディア
Race, Racism and the Law
記事要約
第1次トランプ政権は、「サンクチュアリ(聖域)都市」と呼ばれる移民取締りに協力しない州・自治体への対抗策として、ICE(米移民・関税執行局)が発行する**行政サブポエナ(行政上の召喚状)**を新たな武器として本格的に活用し始めた。これにより、連邦政府が法的に強制できなかった情報提供を、司法の関与なしに自治体へ求め、移民の逮捕・拘束・強制送還につながる機密情報を取得することに成功した。

当初は一部の自治体が抵抗したものの、多くは訴訟の困難さを前に最終的に屈し、住民に守ると約束していた情報を水面下でICEに提出した。この結果、移民にとっては家族や地域から引き離される深刻な人権侵害につながり、自治体にとっては警察権限、プライバシー、自治権といった地方主権の根幹が脅かされる事態となった。サンクチュアリ政策という移民保護の重要な枠組みも大きく損なわれた。

問題の深刻さは、この移民サブポエナ制度が極めて不透明な形で運用されている点にある。ICEのサブポエナは裁判所の承認や訴訟、合理的な嫌疑すら不要で発行でき、公的記録に残らないことも多い。そのため、いつ、どのように、どの範囲で使われているのかについて、政府自身ですら体系的に把握していない。

本論文は、情報公開請求によって得られた数千件の内部資料をもとに、移民サブポエナの実態を初めて包括的に分析している。その結果、ICEが学校の児童記録、福祉機関の機密情報、個人の行動履歴など、極めて私的な領域にまで介入してきたことが明らかになった。また、トランプ政権以前から州・自治体に対し事実上の協力を強制してきた実態や、近年はそれが正式な政策として制度化され、秘密裏に「政府間のサブポエナ戦争」が続いていることも示されている。

さらにICEは、将来分の情報提供やリアルタイム監視を求めたり、自治体に捜査機能を押し付けたり、違法な包括的守秘命令(口止め)を課すなど、権限拡大を試みてきた。これらは連邦制、プライバシー、表現の自由といった憲法上の重大な問題を引き起こしている。

本論文は、こうした実態が違憲・違法行為を体系的に含んでいると指摘し、司法審査の強化や外部的な統制の必要性を提起する。また、移民分野にとどまらず、行政サブポエナ一般の運用に対しても、行政の適正性を当然視する従来の考え方を再検討すべきだと結論づけている。
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