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オーストラリアのネオナチによる先住民の聖地への攻撃は憂慮すべき傾向

公開日
2025-09-06
メディア
ALJAZEERA
記事要約
オーストラリア・メルボルンで2025年8月31日に行われた極右「反移民」デモ「March for Australia」が、先住民の聖地「キャンプ・ソブリンティ」への暴力的襲撃へと発展し、大きな社会的波紋を呼んでいる。デモを主導したのはネオナチ組織「ナショナル・ソーシャリスト・ネットワーク(NSN)」で、参加者は「白人のためのオーストラリア」と叫びながら約50人で先住民の聖地を襲撃。4人が負傷し、2人は重傷で入院した。

キャンプ・ソブリンティは、アボリジナルの埋葬地であり、先住民の主権と文化継承の象徴的な場所。2006年に設立され、現在も「癒し」と「抵抗」の場として維持されている。

襲撃の様子はSNSなどで拡散され、黒い服を着た集団が女性を含む参加者を暴行し、アボリジナルの旗や神聖な火を破壊する様子が記録された。攻撃の際、加害者は「ホワイト・パワー」などの人種差別的スローガンを叫んでいた。

目撃者や医療ボランティア団体「Naarm Frontline Medics」によると、警察は襲撃後に現場に到着し、被害者に対して催涙スプレーを向けたり、救急対応を妨害したとの証言もある。さらに、襲撃に関与したNSNの指導者トーマス・スウェルは当初拘束されず、48時間以上経ってからようやく逮捕・起訴され、後に保釈が却下された。

この事件に対し、先住民の上院議員リディア・ソープ氏は「これは明らかに人種差別的なヘイトクライムであるにもかかわらず、当局がそう認定しないのは制度的な人種差別の表れだ」と批判。警察内部への極右の浸透の可能性にも警鐘を鳴らした。また、特定の政治家や公職者が極右団体とつながりがあるとされることにも疑念が向けられている。

さらに、事件は国際的な極右ネットワークとの関連性も指摘され、NSNは他国のネオナチグループと連携しながらSNSを通じて過激思想を拡散していることが報告された。

現在、襲撃を受けたキャンプ・ソブリンティは継続されており、先住民団体「The Blak Caucus」は9月13日に全国的な抗議行動を呼びかけている。事件は、オーストラリア社会における極右勢力の台頭、制度的人種差別、そして先住民に対する歴史的抑圧の継続を改めて浮き彫りにしている。
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