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米国はすでに医療従事者の不足に直面しているが、移民政策はそれをさらに悪化させる可能性がある。

公開日
2025-12-17
メディア
The Conversation
記事要約
米国の医療現場では、移民が極めて重要な役割を果たしている一方、近年の移民政策の厳格化が将来の医療提供体制を脅かす恐れがあると指摘している。多くの人は医療を支える外国生まれの専門職の存在を意識しないが、政策の方向性次第で、将来自分や家族が必要な医療を受けられるかどうかが左右される。

高齢化の進行や慢性疾患の増加により、米国の医療需要はかつてない水準に達している。一方で医療人材の供給は追いついておらず、2036年までに最大8万6千人の医師不足が見込まれている。病院や介護分野では今後も大量の新規雇用が必要とされるが、国内人材だけで需要を賄うのは難しい状況にある。

こうした人手不足を長年補ってきたのが移民の医療従事者である。全米では医療従事者の約18%が外国生まれで、医師の約4人に1人、看護師の約5人に1人、在宅介護職では約3人に1人を占める。彼らは都市部だけでなく、地方の診療所や人手不足の施設でも不可欠な存在となっている。

州別に見ても移民への依存度は高い。カリフォルニアでは医師の3分の1、看護師の36%、介護職の42%が外国生まれであり、ニューヨーク州では病院職員の約35%、ニューヨーク市では医療従事者の過半数を移民が占める。移民人口の少ない州でも、地方医療や介護分野では移民の役割が際立っている。

しかし、ビザ手数料の引き上げや要件の厳格化、取締り強化といった現在の移民政策は、こうした人材の確保と定着を難しくし、医療現場の人手不足をさらに深刻化させる可能性がある。医療人材の育成には長い時間がかかるため、短期的な代替策はなく、移民の流入減少は病床閉鎖や診療体制の縮小につながりかねない。

その影響は患者に直接及ぶ。診察や治療の遅れ、介護支援の不足、施設の受け入れ制限などが生じ、高齢者や地方住民、都市部の介護施設利用者に大きな負担を与える。移民政策を医療現場の現実と整合させなければ、将来的に米国の医療の質とアクセスが大きく損なわれると警鐘を鳴らしている。
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