入管・在留関連ニュース

日本語どころか母国語の読み書きがおぼつかない…専門家が指摘「技能実習生が大量に失踪する本当の理由」

公開日
2025-12-07
メディア
プレジデントオンライン
記事要約
日本には約45万人の外国人技能実習生が働いているが、毎年5,000〜1万人が失踪し、所在不明となるケースも多い。2024年の失踪者6,510人のうち、2025年5月時点で約45%(2,951人)が行方不明のままで、入管も把握できていない。

神戸大学大学院の斉藤善久准教授は、ベトナム人実習生支援を長年行ってきた経験から、失踪の主因を次の3点に整理する。

①実習生と受入企業の深刻なミスマッチ
送り出し機関が企業・実習生双方に「条件を盛って」説明し、低賃金・パワハラ・集団生活など、聞いていた話と違う現実が判明して双方に不満が蓄積する。監理団体がチェックを怠る、あるいは共謀している例もあり、構造的にミスマッチが起きやすい。

②日本の労働市場の魅力低下
報酬面で豪州・韓国に大きく劣り、日本へ来るメリットが縮小。日本では語学試験が不要で参入障壁が低いため、レベルの高い人材は他国に流れ、「読み書きが不十分な人」や「自分が技能実習生と理解していない人」が来日するケースも増えている。その結果、職場でのトラブルやコミュニケーション不能から、飛び出すように失踪が発生する。

③不法就労コミュニティの存在
失踪後、ベトナム人コミュニティやブローカーの住居に身を寄せ、群馬・茨城・栃木・姫路などの解体業・農業・工場派遣などに流れ込む。偽造在留カードで複数の派遣会社に登録し、摘発前に稼げるだけ稼ぐケースが多い。

さらに、帰国した元実習生が「ブローカー」に転身し、情報弱者を新たな実習生としてリクルートする構造も問題を深めている。平均50万円超の手数料を徴収される実態も、正確には把握困難で闇が深い。

政府は技能実習を廃止し、2027年から「育成就労制度」に移行するが、斉藤氏は「本質的な問題は解決していない」と指摘する。転籍の自由が制限されるなど構造は同じで、日本語要件を緩和すれば、さらに言語能力の低い人材が入り、トラブル増加が予想される。

斉藤氏は、技能実習・育成就労の構造を「国家ぐるみの搾取」と批判し、「美辞麗句ではなく、現状の正確な認識と実効性ある対応が不可欠」と強調している。
タグ
技能実習

「技能実習」を含むニュース記事一覧

公開日
記事のタイトル
タグ
2025-03-15
技能実習,ミャンマー,介護,都市部への人材流出
2025-02-17
育成就労,技能実習,特定技能,都市部への人材流出
2025-02-13
技能実習,特定技能,育成就労,介護