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オーストラリアの脆弱な多文化主義が脅威にさらされている

公開日
2025-10-30
メディア
EAST ASIA FORUM
記事要約
2025年8月末と10月にオーストラリア各地で反移民デモが行われ、社会の分断と多文化主義の揺らぎが明らかになった。多文化主義は1970年代以降公式政策として定着してきたが、その意味は時代とともに「権利」から「社会統合・生産性・安全保障」へと移り、近年は管理色が強まっている。

デモをめぐり世論は分裂しており、生活費や住宅不足への不満の表れだとする声と、極右・白人至上主義に利用されているとする批判がある。一方、政治では中道左派の労働党政府が移民削減を強調し防御的姿勢をとる一方、保守系野党自由党の一部議員は極右的立場に近づき、反移民政党「ワンネイション」も支持を拡大している。

多文化主義は歴代政権で「文化多様性の尊重」から「統合・国家的価値の共有」、さらに「安全保障と統制」へと再解釈されてきた。現政権は「社会的結束」を掲げるが、従来の政策は移民コミュニティを「支援すべき存在」ではなく「管理すべき対象」として扱ってきたと指摘される。

2025年には多文化政策を担当する大臣ポストが内閣入りし、多文化政策を省庁横断的に統括する体制が整えられたが、差別・排除・権力格差に対する具体的対策は依然不十分である。2024年の反人種差別国家戦略では63の改革提言が示されたが、政府はまだ対応方針を明確にしていない。

全体として、多文化主義を支えるとされる「社会的結束」が、包摂ではなく統制の手段として使われ続ける危険が指摘されており、人種差別や排除と向き合う実効性ある政策が急務となっている。
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