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左派(極右ではない)が強硬な移民法を制定した国

公開日
2025-06-06
メディア
BBC
記事要約
デンマークは一見リベラルで国際的なイメージを持たれる国だが、移民政策においてはヨーロッパでも最も厳しい姿勢をとる「先駆者」とされている。意外なことに、こうした厳格な政策を主導しているのは、極右ではなく中道左派の社会民主党であり、首相メッテ・フレデリクセンがその中心人物である。

移民問題はヨーロッパ全体で有権者の大きな関心事となっており、デンマークでは2015年の欧州難民危機をきっかけに議論が激化。移民が急増したことで、地方自治体は社会サービスの圧迫や治安悪化を懸念し、社会の不満が高まった。その結果、デンマーク政府は難民の財産を没収して滞在費に充てる法律を可決し、さらには、難民申請を国外(例:ルワンダ)で処理するという前例のない法制度も導入した。

社会民主党は、これまでの寛容なスタンスから転換し、「移民が福祉制度と社会の結束を脅かす」として強硬政策を掲げ、これが選挙でも支持を集めた。一方で高福祉国家としての側面も維持し、公共サービスへの投資を続けている。

デンマーク政府は移民抑制を国外にも積極的にアピールし、例えばレバノンの新聞に「移民制限が厳しい」と警告する広告を出した。こうした方針の成果として、亡命申請者数は2025年時点で過去40年で最も少なくなっている。

しかし、このような政策は国際人道法や難民の権利を損なうとの批判も多い。特に「非西洋出身者」が多く住む地域の住宅を国家が売却・取り壊すことを可能にする「並行社会」法は、人種差別的であり、移民の子どもたちが「純粋なデンマーク人ではない」と疎外されていると批判されている。

結論として、デンマークの移民政策は効果的と評価する声もあるが、人道的・法的な観点からは問題が多く、社会的分断を深めているという側面も否めない。
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