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欧州が移民問題で強硬姿勢を強める中、デンマークが教訓を示す

公開日
2025-11-23
メディア
The New York Times
記事要約
デンマークは2015年のシリア難民危機以降、欧州でも最も厳しい庇護政策を実行してきた国で、中央左派政権が主導した点で異色とされた。象徴的な「難民の装飾品没収」法や、恒久在留資格取得の難化、審査中や退去不能者を不便な環境の施設に住まわせる制度などを導入し、庇護申請者数は大幅に減少。これにより社会保障制度への負荷を抑え、国民の支持を維持したとされる。一方、人権団体は「底辺への競争」だと批判し、長期的には合法移民やその子孫も歓迎されないと感じる恐れがあると指摘する。

デンマークの施設「アヴンスロップ返還センター」では、トルコから来た女性など、危険を恐れて祖国に戻れない難民が長期間生活し、就労も許されず「屋外の刑務所のようだ」と語る。政府がどれほど厳しい政策を続けても、危険から逃れてきた人々は帰れない現実も浮かぶ。

デンマークの強硬路線は政治的には一定の効果を上げ、極右政党の台頭が続く欧州で社会民主党が政権を維持した。しかし直近の地方選挙では同党が大敗し、移民への姿勢を「差別的」「恐怖を煽る」と受け止める有権者も増え、来年の国政選挙への不安材料になっている。また、公営住宅から「非西洋系住民」を減らす政策はEU当局から差別と判断される可能性も指摘されている。

厳格な庇護政策の実効性には一定の評価があるものの、社会的コストや国際的評価、移民コミュニティの疎外といった副作用も大きく、デンマーク自身の政治的支持も揺らぎ始めている。政府関係者は「必要な外国人を受け入れつつ庇護の流入を抑えるというバランスが重要」と強調しつつ、政策の見直しも必要との認識を示している。
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デンマーク