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デンマークの強硬移民政策の内幕

公開日
2025-12-02
メディア
Noema Magazine
記事要約
デンマークでは移民・難民政策が次期選挙の主要争点となり、社会民主党のフレデリクセン首相は治安悪化の不安を強調しつつ、移民に厳しい姿勢を公然と示している。これによりアラブ系の市民などが疎外感を抱き、国内で論争が広がっている。一方、非西欧系移民とその子孫が人口の約1割を占める同国では、20年以上にわたり移民規制が強化され、現在では「移民制限」が政党を超えた政治的合意となっている。家族再統合の厳格化、亡命希望者の抑制、難民財産の没収など、厳しい政策が体系的に実施されてきた。

2000年代初頭、保守政権が極右のデンマーク国民党の支援を受けて以来、移民政策は大きく右傾化した。テレビドラマ『ボルゲン』に描かれたように、極右の要求を取り込む形で法律が連続的に強化され、2010年代には社会的コンセンサスとして定着した。2015年のシリア難民危機でも、スウェーデンやドイツが難民受け入れに踏み切る中、デンマークは国境を半閉鎖し、難民の財産没収を可能にする法改正を行い、国際的批判を浴びた。

転機となったのは社会民主党の右傾化である。2015年以降、支持回復のために「難民は原則一時的滞在者」とする方針転換を採用し、2019年の政権復帰後は難民の国外移送や家族再統合上限など、極右に近い政策を次々と実施した。これにより労働者層の支持を取り戻したが、移民論争の基調は政治全体でさらに右へ移動した。

さらに極右勢力は、市民権を持つイスラム系住民を対象とした「再移住(remigration)」、すなわち市民権再審査や強制帰還を提案しており、一部政治家や学者は「現代的な民族浄化」と批判している。

他方、労働力不足に悩む経済界や都市部のリベラル層、若者からは規制強化に対する反発が強い。しかし国全体としては、非西欧系移民への厳しい姿勢が依然多数派を形成している。

記事は、デンマークの経験が他国への「模範」ではなく、むしろ中道・中道左派が右派政策を取り込むことで極右の要求がさらに強まり、社会全体の排外主義が合理化される危険性を示す「警告」であると結論づけている。
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