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スペインの移民と労働市場(II):ラテンアメリカからの移民

公開日
2025-12-19
メディア
Elcano
記事要約
同記事は、スペインにおけるラテンアメリカ移民の特徴と労働市場への影響を分析し、同国の移民構造が欧州の中でも際立って独自性を持つことを論じている。スペインではラテンアメリカ出身者が移民全体の大きな割合を占めており、言語や文化、宗教の共通性により、他地域出身の移民と比べて社会的統合が比較的進みやすいとされている。この背景には、ビザ免除による入国のしやすさ、家族・コミュニティネットワークの存在、さらにラテンアメリカ出身者が短期間の合法滞在でスペイン国籍を取得できる制度的優遇がある。

労働市場においては、ラテンアメリカ移民の就労参加率は高く、スペイン経済を下支えする重要な存在となっている一方、就業分野は家事労働、個人サービス、観光、建設、小売など、低・中技能職に集中する傾向が強い。教育水準は他地域出身の移民より相対的に高いものの、高学歴者であっても技能に見合わない職に就くケースが多く、公的部門への就業割合も極めて低い。このような職業的ミスマッチや賃金格差は、統合の質という点で課題として指摘されている。

また、若年層では学校中退率が高い傾向が見られ、将来的な社会的・経済的統合に影を落とす可能性があるとされる。記事は、スペインがラテンアメリカ移民を通じて労働力不足を補い、社会的摩擦を比較的抑えてきた一方で、低技能職への固定化や教育・雇用の格差といった構造的問題に直面していると結論づけている。今後は、単なる受け入れ規模の拡大ではなく、移民の能力をより生かせる労働市場政策や教育支援を通じて、長期的な社会統合の質を高めることが不可欠だと論じている。
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スペイン