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移民弁護士は、IRCCの処理技術の使用が不当なビザ拒否につながることを懸念している。

公開日
2025-09-16
メディア
CBC
記事要約
カナダの移民制度において、申請の却下が「人間の目で本当に審査されたのか疑わしい」と感じるケースが増えています。移民申請者や専門家の間では、不合理な却下理由に対する懸念が広がっており、その背景には移民・難民・市民権省(IRCC)が導入しているコンピュータ支援型の審査ツールの存在があると指摘されています。

実際、出生証明書を提出したにもかかわらず「未提出」とされて却下されたケースや、複数の雇用関連書類を出したにもかかわらず「1通しかない」と記されたケースなど、明らかに事実と食い違う却下理由が報告されています。元IRCC職員で現在は移民コンサルタントを務めるアニー・ボードワン氏も、「すべての書類に目を通すことは手続き上の公正性に不可欠だが、最近はそれが守られていない例が見られる」と指摘します。

こうした背景には、IRCCが導入した「アドバンスト・データアナリティクス」や「Chinook」と呼ばれる処理ツールの影響があります。これらの技術は、大量の申請を短時間で処理するために開発されたもので、特にChinookでは一度に1000件近くの案件を画面上に並べ、テンプレートを使って一括処理できる機能も含まれています。IRCC側は、あくまでも人間の審査官が最終判断をしていると説明していますが、実際には一件ごとに十分な時間をかけず、表面的な判断にとどまっている可能性があると、複数の弁護士やコンサルタントが疑問を呈しています。

たとえばカナダ人と結婚している外国人が訪問ビザを申請したにもかかわらず、配偶者の存在や既に提出済みのスポンサー申請に一切触れられずに却下された例もあり、最終的には再審査でビザが発給されましたが、初回の判断のずさんさが問題視されました。

こうした状況を受けて、カナダ移民弁護士協会も8月に公開書簡を出し、「近年の機械支援審査の導入が、不適切で根拠の薄い判断を増やしている」と警鐘を鳴らしています。IRCCは効率化のためにテクノロジー活用を進めていますが、公正さや透明性を損なわず、申請者の権利を尊重した審査が本当に行われているのか、制度のあり方が問われています。
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