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『スレイマンの物語』レビュー:ボリス・ロイキン監督の痛烈な共感を呼ぶ移民ドラマ

公開日
2025-07-26
メディア
SLANT
記事要約
『Souleymane’s Story』は、ギニアからパリに移住した若者スレイマヌ(演:アブ・サンガレ)が亡命申請を待つ場面から始まります。監督ボリス・ロシュキンは、希望と絶望の狭間で生きる彼の48時間を描き、過酷な労働と不安定な生活を通じて、現代社会における移民の厳しい現実を浮き彫りにします。

スレイマヌは配達員として働いていますが、実は友人エマニュエルのUberEatsアカウントを借りており、常に顔認証やコード入力に追われます。このような屈辱的な体験の積み重ねが、移民が「微笑みながら耐える」よう仕向けられる社会の構造的問題を鋭く告発しています。

本作は、ダルデンヌ兄弟のような手持ちカメラによる流動的な映像スタイルを取り入れており、スレイマヌの不安定な生活と見事に重なります。彼が事故に遭っても警察には報告できず、注目されることさえ避けなければならない現実が描かれます。

スレイマヌは偽の政治亡命の物語をブローカーから与えられ、それを暗記しますが、面接官は「あなた自身の物語を話してください」と問いかけます。この瞬間、彼は自分を偽って生きなければならない非人間的な制度の中で葛藤します。

映画は彼を単なる被害者としてではなく、ホームレス施設での冗談や会話などを通じて人間味を与えようとしますが、その描写がやや押し付けがましく感じられる場面もあります。それでも、警察による職務質問、友人との対立、恋人との喧嘩など、移民としての厳しい日常がリアルに描かれ、現代社会の不平等構造を鋭く浮かび上がらせます。

最終的に、本作は個人の道徳や善悪ではなく、制度そのものを告発する政治的かつ人間的なドラマとして、移民の現実を深く見つめています。
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