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移民裁判所を罠として利用する

公開日
2025-06-06
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Verfassungsblog
記事要約
アメリカでは、移民税関捜査局(ICE)が、移民裁判所で訴訟が却下された非市民をその場で逮捕し、迅速な強制送還(expedited removal, ER)に移行させるという新たな取り締まりを進めています。本来、訴訟の却下は非市民にとって一時的な救済措置とされてきましたが、現在ではそれがかえって拘束や送還の契機となっており、適正手続きや法の趣旨に反するとの批判が強まっています。

ICEは、出頭義務を守ったり裁判に応じたりする非市民を「逮捕しやすい標的」とみなし、積極的に拘束しています。こうした方針は、非市民が手続きを避けて姿を隠す動機を与える恐れがあり、制度全体への信頼を損なうとの懸念があります。

また、1996年に導入された即時強制送還制度(ER)は、入国管理職員が司法審査を経ずに送還命令を出すことを可能にするもので、本来は特定の非市民に限定されていました。しかし、近年はその適用範囲が拡大されており、特に移民パロール(臨時滞在許可)を失った人々が新たに対象とされています。トランプ政権は、バイデン政権下で一時的に認められた数百万の非市民に対するパロール措置を撤回し、それによって彼らをERの対象と見なす方針を打ち出しました。

こうした政策には、憲法上および法令上の疑義も生じています。アメリカに滞在する非市民にも第五修正による適正手続きの保障が適用されるため、ERによる送還が誤った判断に基づくものであれば、重大な人権侵害となり得ます。また、移民国籍法や行政手続法に照らしても、パロールの撤回やERの拡大が「越権」や「恣意的」と見なされる可能性があります。

このように、ICEによる移民裁判所での逮捕や、パロール撤回を通じた即時送還の拡大は、法的にも倫理的にも大きな問題を含んでおり、今後司法判断や政治的議論の焦点となることが予想されます。
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