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どうなる?複雑な日本型在留資格―濱口 桂一郎『外国人労働政策-霞が関の権限争いと日本型雇用慣行が招いた混迷の30年史』松原 隆一郎による書評

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2026-03-16
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記事要約
高市早苗首相が参議院本会議で、在留資格「特定技能2号」には受け入れ人数の上限がないと答弁したことをきっかけに、一部の保守層が「移民政策の開始」と批判した。しかし首相は既存の入管法の内容を説明したに過ぎず、制度の複雑さが誤解や不安を招いている面がある。実際には特定技能外国人の多くは在留期間が最大5年の「1号」であり、更新制限がなく家族同伴が可能な「2号」はわずか数千人にとどまる。
本書は、日本の外国人労働者の在留資格が複雑になった背景を分析する。特に1980年代以降、労働政策の原則である三者構成や「労働者としての許可」という考え方を採用せず、外国人に「労働者ではない」資格を与えてきたことが制度の矛盾と複雑化を生んだと指摘する。
その理由の一つとして、法務省と労働省の権限争いがあった。1989年の入管法改正では日系人や研修生の受け入れが進んだが、外国人労働者の管理は主に法務省入国管理局が担い、労働行政は関与が限定された。その後2000年代以降は官邸主導の政策決定が強まり、省庁間の対立は次第に解消された。
もう一つの背景として、日本型雇用システムの影響がある。企業内教育を重視する日本型雇用の発想のもと、外国人研修制度では非営利団体が監督役となった。しかし職種や技能で評価されたい外国人労働者にとっては不利であり、2018年の特定技能制度の導入により技能試験などの公的評価が整備されるようになった。
著者は、制度の歴史的経緯の分析は説得的だと評価しつつ、仮に早くから海外の労働政策を取り入れていても社会不安が防げたとは限らないと指摘する。欧米でも移民をめぐる排外主義が強まっていることから、重要なのは制度そのものよりも、どのように社会統合を実現するかだと結論づけている。
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