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移民政策に関する合意の喪失により反移民感情が高まる

公開日
2025-12-20
メディア
CityNews
記事要約
カナダでは、これまで「移民は国にとってプラスである」という広範な社会的合意が存在してきたが、近年その認識が大きく揺らいでいる。複数の世論調査や政府調査によれば、国民の約半数が「移民が多すぎる」と感じており、この傾向は新型コロナウイルス後に顕著になった。

背景には、パンデミック後の急激な人口増加と、それに伴う住宅価格や生活費の高騰、医療や公共サービスへのアクセス悪化などがある。政府は「移民制度の持続可能性」を重視する方針に転じ、2026年の永住者受け入れ数を38万人に抑える一方、一時滞在者の受け入れは大幅に削減する計画を示している。永住者の受け入れ目標は、2024年のピーク以降、2年連続で減少する見通しとなっている。

こうした世論の変化と並行して、人種的動機に基づくヘイトクライムが急増している。特に南アジア系住民を標的とした犯罪は2019年から2023年にかけて大幅に増加し、研究者や当事者は、露骨な差別から日常的なマイクロアグレッションまで、社会全体で人種差別が強まっていると指摘する。

インド出身者は現在、カナダ最大の移民集団であり、移民政策と住宅問題、雇用環境の悪化を結びつける政治的言説が、反インド感情や反移民感情を助長しているとの見方も示されている。与党・野党ともに移民が生活費高騰の原因ではないとしつつも、政府の受け入れ規模の管理不足が世論悪化を招いたとの批判がある。

専門家は、反移民感情の高まりは人々の経済的不安と密接に関係しており、景気が改善し生活の安定感が戻らない限り、こうした感情は沈静化しにくいと分析する。また、オンライン空間では差別的言説が持続的に拡散されており、たとえ一時的に落ち着いても、再燃する可能性が高いと警告している。

総じて、カナダでは移民受け入れをめぐる社会的合意が弱まり、経済的不安と結びついた排外的感情や差別の拡大が深刻な課題となっている。
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