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トランプ政権の合法的移民への敵対姿勢は、アメリカのイノベーションにおける世界的リーダーシップを損なう

公開日
2025-11-13
メディア
Center for American Progress
記事要約
このレポートは、アメリカのイノベーションと競争力がいかに移民、とりわけSTEM分野の高度人材に支えられてきたかを示しつつ、トランプ政権の反移民政策がその基盤を損なっていると批判的に論じています。グーグル創業者やmRNAワクチン開発者など、移民がAIや先端技術で中心的な役割を果たしてきた一方で、近年の政策によって、そうした人材がアメリカを避け他国へ流出しつつあると指摘します。

具体的には、学生ビザの取り消しやSEVIS記録の削除、留学生・研究者の拘束、渡航制限・ソーシャルメディア審査の強化などにより、留学生・研究者が「いつ拘束されるかわからない」という恐怖を感じ、アメリカを選ばなくなっていると述べます。さらに、高等教育機関への介入や、留学生の就労を可能にするOPTプログラムの廃止方針、H-1Bに対する10万ドルの新手数料、富裕層向け「ゴールドカード」構想、21歳超の子どもの永住資格保護の撤回などが、合法的な移民の道を狭め、家族やキャリアの安定を脅かしていると批判します。

一方で、カナダやスペイン、中国、英国、フランスなどは、アメリカで学んだ留学生や研究者を積極的に受け入れる制度を整え、グローバル人材獲得競争を強めています。トランプ政権のレトリックと制度運用は、留学生数の減少、大学・地域経済への損失、AI人材・高度人材の海外流出を招き、特にAI分野では中国など競合国に対する優位性を失う危険が高まっていると述べます。

レポートは、老朽化した移民制度(ビザ枠・グリーンカードの上限・バックログなど)が30年以上見直されていないこと自体が問題であるとした上で、富裕層を優遇する「見栄えの良い施策」ではなく、議会と協力して制度全体を近代化し、H-1Bなど一時ビザの乱用防止と労働者保護、AI・STEM分野の高度人材や起業家・留学生が長期的に滞在・定住できるルートの拡充が必要だと主張します。また、国内の教育・リスキリング投資と組み合わせることで、移民と米国人労働者がともにAI経済を支え、アメリカのイノベーションと経済成長を長期的に維持すべきだと結論づけています。

付録では、イノベーションと関連の深い主な在留資格として、H-1B(専門職)、F-1+OPT(留学生と卒業後の実務訓練)、J-1(交流訪問者・研究者等)、雇用ベース永住権(年14万枠とその深刻な待機行列)を挙げ、それぞれの制度的制約が高度人材の定着を妨げている現状も整理しています。
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米国