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移民制度の内情

公開日
2025-11-12
メディア
Brennan Center for Justice
記事要約
トランプ政権による大規模な強制送還の方針強化を受け、アメリカの移民制度が改めて注目されている。各州への協力圧力や抗議活動への取り締まりも強化され、特にラテン系を中心に多くの移民コミュニティが不安定な状況に置かれている。

元ホワイトハウス移民政策顧問で司法省にも勤務したマーギー・オヘロン氏によると、アメリカへ合法的に移住できる道は家族、雇用、人道的理由の3種類しかなく、それぞれに厳しい上限や条件があり、合法的移住は極めて難しいという。難民受け入れ枠も7,500人と過去最低水準に抑えられ、庇護申請も膨大な審査遅延により長期化している。

入国審判制度を監督する「移民控訴委員会(BIA)」は全国の移民裁判所の判断を審査し、法の適用を統一する役割を担うが、トランプ政権下で100人以上の裁判官が解雇され、経験のない軍法務官が後任に充てられるなど、法的中立性や制度の信頼性が揺らいでいる。また、控訴費用も110ドルから1,010ドルへと引き上げられ、経済的に余裕のある者だけが控訴できる「二重の司法構造」が生じている。

さらに、ICE(移民税関執行局)検察官の裁量が縮小され、従来よりも迅速な強制送還手続(expedited removal)が多用されるようになり、法的保護が弱まっている。移民裁判官にも政府寄りの判決を出す圧力があり、公正な判断が損なわれているとの指摘がある。

移民当局による暴力的な逮捕や差別的取り締まりも問題視されており、苦情申し立てや訴訟は可能だが、監督機関の人員削減により実効性が低下している。最高裁はまた、ICEが人種や職業などを理由に逮捕する権限を一時的に認めており、権限濫用への懸念が高まっている。

オヘロン氏は、最も深刻なのは「適正手続き(デュー・プロセス)」の形骸化だと警告する。強制送還対象者が増える一方で、移民裁判所の人員増は追いつかず、軍人が審判を代行する事態も懸念される。政府は「犯罪者の排除」を掲げているが、実際には罪のない移民や合法的滞在者、さらには米国市民まで拘束されている例もある。

彼女は、移民制度の問題は長年の構造的なものであり、単なる予算増ではなく、公平性や人道的審査の充実、裁判手続の適正化を含む総合的な改革が必要だと訴えている。
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米国