[ブログ]クリーンな受入れ企業でも巻き込まれる「特定技能」偽装申請——改正行政書士法と届出・報告義務が摘発を加速させる理由
2026-01-25
2026年1月22日付の報道では、登録支援機関の関係者らが、特定技能1号の在留申請において「特定技能所属機関(受入れ企業)」を偽って申請し、実態は別先で就労させていた疑いで逮捕されたと伝えられました(産経記事)。今回、名前を使われた清掃会社は自ら告発したとされており、少なくとも当該所属機関はコンプライアンス意識が高い、いわゆるクリーンな会社であった可能性がうかがえます。ここが重要で、一般に想像されがちな「グレーな所属機関が不正を主導した」構図とは限らず、むしろクリーンな会社の名義ほど“審査上きれいに見える看板”になり得るという逆説を示しています。
クリーンな所属機関でも「名義悪用」の被害者になり得る
特定技能制度では、登録支援機関に支援の全部委託が可能なため、受入れ企業は支援実務の一部を外部化できます。一方で、支援が外部化されるほど、手続の接点(書類のやり取り、申請の段取り、本人との連絡)が登録支援機関側に寄りやすくなり、受入れ企業が「自社名義で何が提出されたか」をリアルタイムに把握しない運用も現実には起こり得ます。その結果、第三者が名義を悪用し、受入れ企業が“被害者側”になってしまう余地が生まれます。つまり、この種の不正は、所属機関が注意すれば完全に予防できるタイプというより、どうしても発見は事後寄りになりやすい、という性質を持ちます。
それでも今後、同種事案の「摘発は容易になっていく」と見込まれる
ただし、同種行為は今後、従来より摘発されやすくなっていく傾向が見込まれます。理由は大きく二つあります。
改正行政書士法で「在留申請目的の報酬受領」の線引きがより明確に
2026年1月1日施行の改正行政書士法により、行政書士(または行政書士法人)でない者が、他人の依頼を受け、名目を問わず報酬を得て官公署に提出する書類の作成等を業として行うことはできない、という整理が一段と明確化されました。これにより、登録支援機関が“支援料”“手数料”“サポート費”等の名目で、実質的に在留申請(書類作成)対価を受け取っていた場合、資金の流れ(請求・入金・契約・社内連絡等)から違法性を押さえやすくなります。さらに、登録支援機関側もコンプライアンス上、在留申請関連業務で報酬を得る発想自体が取りづらくなる方向性が整理されており、制度運用は「支援」と「申請書類作成」の分離に向かうと考えられます(NGJ解説)。
届出・報告義務が「痕跡」を残し、突合で不整合が露見しやすい
特定技能制度では、特定技能所属機関・登録支援機関に、各種の届出・報告が制度として組み込まれています(出入国在留管理庁の特定技能に関する届出案内等を参照)。これらは単なる形式ではなく、支援の実施状況、受入れ状況、特異事案の報告など、運用の“痕跡”を複数箇所に残す構造です。名義悪用型の不正は、申請上の所属機関と実際の就労実態がどこかでズレますが、そのズレは届出・報告・記録のつじつま合わせを難しくし、後からの突合で矛盾として拾われやすくなります。結果として、告発がなくても、関係資料の突合と周辺捜査で立証に近づきやすい土台が強まります。
まとめ:予防の限界はあるが、改正法と記録義務で摘発は加速し得る
今回のように、名義を使われた所属機関が自ら告発した可能性がある事案では、所属機関がいくらクリーンでも、第三者による名義悪用を事前に完全排除するのは難しい面があります。しかし、2026年1月1日施行の改正行政書士法によって、登録支援機関などが在留申請(書類作成)目的で報酬を受け取ることの違法性が名目を問わずより明確になり、金銭の流れから立証しやすくなる方向が見込まれます。また、特定技能制度に内在する届出・報告義務は、運用記録を多点で残し、不整合を突合で発見しやすい構造です。したがって、この種の犯罪は「予防が難しいから野放し」ではなく、むしろ法改正と記録義務の積み上げにより、今後は摘発が容易になっていく流れが強まる、と整理するのが現実的だと思われます。
