[ブログ]2026年行政書士法改正が示す「非行政書士の業務禁止」の明確化と、登録支援機関が改めて留意すべきポイント
2025-12-10
2026年1月1日に施行される行政書士法改正は、従来の解釈をより明確にし、行政書士又は行政書士法人でない者が他人の依頼を受け、報酬を得て、行政書士法第1条の3に定める業務を「業として」行うことを禁止する規定を改めて明文化した点に大きな意義があります。これまでも非行政書士による報酬目的の申請書作成や代理行為は違法とされていましたが、実務の現場ではいわゆる「名目替え」「包括サポート」「コンサル契約」など、報酬の受領形態を変えて実質的に行政書士業務を行う例も散見されました。今回の改正はこうしたグレーゾーンを明確に排除し、依頼者保護と行政手続の適正性をより強固にするためのものと言えます。
■ 改正の背景:無資格者による報酬型行政手続サポートの増加
特に在留資格申請や建設業許可、補助金申請等、専門知識が求められる分野では、行政書士資格を持たない事業者が「サポート」「コンサル」「翻訳代行」などの名目で実質的に申請書の作成や代理的行為を行い、対価を受け取る例が増加していました。行政書士法ではこれらの行為はそもそも禁止されていますが、法文上の明確さを欠くために、無資格者側が「これは行政書士業務ではない」と主張する余地が残っていました。今回の改正では「いかなる名目によるかを問わず」という文言が追加されたことで、名目変更による逃避を完全に封じ、無資格者による行政手続ビジネスを厳格に排除する強い意思が示されています。
■ 行政書士の役割と依頼者保護の強化
行政書士は国家資格者として、行政手続の適正性を確保し、依頼者の権利利益を保護する専門家です。行政書士による申請書作成や代理行為は、秘密保持義務、品位保持義務、懲戒制度などの枠組みの下で行われるため、依頼者の利益が制度的に守られています。一方、無資格者による「サポート業務」では、法的責任や品質保証の枠組みが存在しないため、虚偽申請、不備申請、申請取下げなどのトラブルが繰り返し発生してきました。今回の明文化は、依頼者保護をより確実にするための制度的強化と位置づけられます。
■ 登録支援機関が特に注意すべき理由
登録支援機関は、在留申請取次者になることが認められる可能性がある立場ですが、これはあくまで「登録支援業務と取次業務が明確に分離されていること」が大前提です。支援機関は特定技能外国人の生活・職場適応支援を行うことを目的とした機関であり、報酬を得て申請書を作成したり、代理的に行政手続を行う権限を持っているわけではありません。今回の法改正により、支援機関が「支援名目」で実質的に行政書士業務を行ってしまうリスクがより厳しく問われることになります。
■ 登録支援機関としての具体的留意ポイント
(1)申請書の作成代行を報酬付きで行わないこと。申請書の内容を「指示」したり「代筆」したりする行為も、有償であれば行政書士業務に該当し得ます。外国人本人の作成をサポートする場合でも、実質的な代理と評価されれば違法となります。
(2)支援委託契約に行政書士業務を含めないこと。支援契約の中に「申請書作成サポート」「変更許可の書類作成」などの文言を入れることは避けるべきです。行政書士業務を行う場合は、行政書士または行政書士法人と明確に契約関係を分ける必要があります。
(3)企業からの相談に対して「申請方針」や「法的判断」を報酬付きで提供しないこと。行政手続に関する法的判断や手続方針案の提示は、行政書士の独占業務に該当し得ます。
(4)在留申請取次を行う場合でも「取次業務の範囲」を厳守すること。取次者は一定範囲内で申請書の提出を代行できますが、申請書の「作成」や「内容責任」は外国人本人または行政書士にあります。支援機関がこれを誤解した運用をすると改正法違反となる可能性があります。
■ まとめ:2026年改正は、登録支援機関にも明確な線引きを迫る
行政書士法改正は、無資格者による行政手続ビジネスを排除し、依頼者保護を強化するための重要な制度改正です。特に在留資格関連業務に関わる登録支援機関は、自らの業務範囲と行政書士業務の線引きを従来以上に明確にし、契約文書・業務フロー・案内文書の整理を行う必要があります。適切に線引きをすることで、支援機関としての信頼性が高まり、特定技能制度全体の健全な運用にも寄与します。今回の改正は単なる形式的な明記ではなく、行政手続の品質と公正性を高め、外国人と受入企業双方の利益を守るための重要な一歩といえるでしょう。
