[ブログ]登録支援機関は「支援」でどう差別化するか――特定技能2号支援の可能性

2025-12-12

こちらの記事で触れたように、登録支援機関は今後、在留申請関連業務で報酬を得ることができないということが、これまで以上に明確化される方向にあります。これまでもグレーゾーンに見えていた「在留申請の書類作成・取次」と「在留中の生活・労働に関する支援」の境目が、法改正を通じてよりくっきりと線引きされていく見込みです。その結果、登録支援機関は、「申請書類を作ってあげる」ことで評価される時代から、「どれだけ質の高い支援を提供できるか」で選ばれる時代へと、本格的にシフトしていかざるを得ません。

在留申請ではなく「支援」で選ばれる時代へ

登録支援機関はこれまで、特定技能外国人の受入れ時に、在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更許可申請に関して相談を受けたり、書類の作成を実務上サポートしたりすることで、特定技能所属機関からの信頼を得てきた面があります。しかし、在留申請取次は本来、行政書士または弁護士といった資格者の独占業務であり、登録支援機関として在留申請関連業務で報酬を得ることは許されないという原則が、これからは一層明確に意識されることになります。つまり、登録支援機関が特定技能所属機関から報酬を受け取る正当な根拠は、「純然たる支援業務」にほぼ限定される、ということです。

そうなると、所属機関から見たときに、「この登録支援機関に頼めば在留申請をすべてやってもらえる」という分かりやすい魅力は前面に出しづらくなります。その代わりに、「この登録支援機関に依頼すれば、現場の戦力を長期的に育ててもらえる」「特定技能外国人がキャリアアップし、離職せずに定着する仕組みを一緒に作ってくれる」という、本来の意味での『支援』こそが評価のポイントになります。登録支援機関同士の競争軸も、書類作成の器用さから、支援メニューの質と戦略性へと移っていくでしょう。

差別化のカギは「特定技能2号取得支援」

では、支援業務のどこで差別化を図るべきでしょうか。私が特に重要だと考えているのが、「特定技能2号の資格取得支援」です。特定技能制度が導入された当初は「1号で5年働いて終わり」というイメージが強く、2号は一部の限られた人だけが目指すルートだと見られていました。しかし、制度が徐々に整備される中で、2号への移行を前提にしたキャリアパスを設計できるかどうかが、外国人材の定着や企業の中長期的な人材戦略において、ますます重要な意味を持ち始めています。

特定技能2号は、在留期間の更新に上限がなく、家族帯同も可能です。つまり、本人にとっては「日本で腰を据えて働き、生活を築くための在留資格」であり、企業にとっては「長期的に戦力として育成し続けられる人材」を確保できる仕組みと言えます。逆に言えば、2号を見据えた育成戦略がない企業は、「せっかく育てた特定技能外国人が、数年で他社や他国に移ってしまう」リスクを抱え続けることになります。このギャップを埋める役割を担えるのが、登録支援機関なのではないでしょうか。

2号評価試験の学習サポートという新しい支援領域

特定技能2号への移行には、分野ごとに定められた「2号評価試験」等への合格が求められます。現場で実務経験を積んでいる特定技能1号の外国人であっても、日本語で書かれた専門的な試験範囲を独力で理解し、合格レベルまで学習を進めるのは容易ではありません。ましてや、多忙な現場で働きながら、計画的に勉強時間を確保し、モチベーションを維持するのは、相当な負担です。ここにこそ、登録支援機関が価値を発揮できる余地があります。

たとえば、2号評価試験の出題範囲をわかりやすい母国語ややさしい日本語で整理した学習資料の作成、勤務シフトに合わせたオンライン学習会の開催、模擬試験や小テストの提供、日本語能力との兼ね合いを踏まえた学習計画の立案、所属機関の現場管理者に対する「試験支援の仕方」のミニ研修など、支援の可能性は多岐にわたります。これらはまさに「在留申請」ではなく、「就労・生活・キャリア形成を支える支援」ですから、登録支援機関が正面から提供できる付加価値サービスです。

所属機関にとってのメリットを可視化する

特定技能所属機関にとっても、2号評価試験の学習サポートは、大きなメリットがあります。第一に、2号を取得した人材は長期在留が可能となるため、中核人材として計画的に育成できます。これにより、現場のリーダー層やOJT担当者を日本人社員だけに依存せず、外国人材の中からも育てていくことが可能になります。第二に、「2号を目指せる職場」であることは、特定技能人材を採用する際の強力なアピールポイントとなります。求人段階から「2号取得支援あり」「長期キャリアパスあり」と打ち出すことで、より意欲の高い候補者を惹きつけることができます。

さらに、2号評価試験に向けた学習サポートは、単に試験合格を目指すだけではなく、現場の安全や品質向上にも直結します。試験範囲を体系的に学ぶことは、結果として作業手順や安全ルールの再確認につながり、ヒューマンエラーや事故の予防にも寄与します。「試験に受かるための勉強」が、「職場全体の底上げ」に自然とつながっていく――その橋渡しをコーディネートできる登録支援機関は、所属機関から見て非常に心強いパートナーになるはずです。

次回、具体的な学習支援メニューをご提案します

このように、登録支援機関が今後も安定的に選ばれ続けるためには、「在留申請のサポート」ではなく、「特定技能外国人のキャリアと定着を支える支援」で差別化していくことが欠かせません。その差別化の軸として、特定技能2号の資格取得支援、とりわけ2号評価試験の学習サポートは、非常に相性の良い領域だと考えています。もちろん、実際にどのようなメニューを用意し、どの程度の工数と費用感で提供していくかは、所属機関の規模や分野、外国人材の構成によっても変わります。

そこで次回の記事では、登録支援機関が実際に提供しうる「2号評価試験学習サポートメニュー」の具体案をご紹介する予定です。登録支援機関として、これからの数年間をどう戦略的に乗り切るか。そのヒントを一緒に探っていく連載にしていきたいと思っていますので、ぜひ次回の記事も楽しみにお待ちいただければ幸いです。

Kenji Nishiyama

筆者:西山健二(行政書士 登録番号 20081126)

外国人の在留資格をサポートしてきた行政書士。事務所サイトでは、在留・入管に関する最新ニュースや実務のヒントを毎日発信中。外国人雇用にも詳しく、企業の顧問として現場のサポートも行っている。