[ブログ]経営・管理の3,000万円要件が問い直す在留資格の本質――専門業務と経営活動を分けて考える
2026-10-16
2025年10月16日、在留資格「経営・管理」の許可基準が改正され、資本金等3,000万円以上、常勤職員の雇用などが求められるようになった。従来の500万円という基準から大幅に引き上げられたことで、特に小規模な事業を営む外国人経営者に大きな影響が生じている。既に「経営・管理」で在留している外国人については経過措置が設けられており、2028年10月16日までに新基準を満たせないことのみを理由として更新が不許可になるわけではない。その後も一律に不許可となるものではないが、将来の在留継続に不安を抱く経営者は少なくないだろう。しかし、ここで一つの根本的な疑問が生じる。そもそも、従来「経営・管理」の在留資格で活動してきた小規模事業者の業務は、そのすべてが本当に「経営・管理」に該当していたのだろうか。
小規模経営者の実際の仕事を考える
小規模企業の経営者は、経営判断だけを行っているわけではない。人事制度の設計、労務管理、財務分析、会計処理、海外取引、マーケティング、情報システムの構築など、さまざまな専門業務を自ら担当している。例えば、ある外国人経営者が週40時間働き、そのうち30時間を専門的な人事管理、会計分析、海外営業などに充て、残る10時間を経営判断に充てているとしよう。この場合、本人の活動全体を当然に「経営・管理」と評価してよいのだろうか。もちろん、業務時間だけで在留資格が決まるわけではない。人事や会計に関する業務であっても、経営上の意思決定や組織管理そのものに該当する場合がある。しかし、専門知識を用いた実務と経営者としての意思決定は、概念上区別できるはずである。
入管庁自身が認めている活動の重複
この問題について、出入国在留管理庁は以前から重要な解釈を公表している。「経営・管理」と「技術・人文知識・国際業務」の関係について、企業の経営活動や管理活動には自然科学や人文科学の知識を必要とする業務が含まれることがあり、両者の活動が一部重複すると説明している。そして、業務内容に経営活動や管理活動が含まれていても、業務全体として「経営・管理」に該当しない場合には、「技術・人文知識・国際業務」に該当することがあるとしている。これは重要な解釈である。代表取締役という肩書だけで在留資格が機械的に決まるわけではなく、実際に従事する活動の内容を検討する必要があることを示している。ただし、同じ公表資料では、実質的な経営・管理活動と専門業務が重複する場合には「経営・管理」が決定されることや、経営者として新たに就任・再任する際には原則として同資格への変更が必要となることも示されている。したがって、代表取締役のまま「技人国」に変更することが当然に認められるわけではない。参照:出入国在留管理庁「経営・管理、技術・人文知識・国際業務及び企業内転勤の各在留資格とその関係」。
本来の活動は「技人国」だったのではないか
ここで、従来の小規模外国人経営者について、別の見方が可能になる。代表取締役であるという理由から「経営・管理」で在留していたものの、日常業務の中心は専門的な人事管理、会計分析、国際取引などであり、経営判断はその一部にすぎなかったというケースである。そのような場合、主たる活動を「技術・人文知識・国際業務」として再評価する余地があるのではないだろうか。「技人国」には、関連する学歴や実務経験などの要件がある。技術・人文知識分野では、原則として関連業務について10年以上の実務経験があれば、学歴に代わる要件を満たし得る。ただし、単に10年間会社を経営していたというだけでは足りず、変更後に従事する専門業務に関連した経験を立証する必要がある。重要なのは、会社の資本金ではなく、本人がどのような専門的活動を行っているかという点である。
経営活動を資格外活動として整理できないか
さらに検討したいのが、専門業務を「技人国」の主たる活動とし、代表取締役としての経営活動を資格外活動として整理する方法である。入管法第19条第2項は、一定の条件の下で、本来の在留資格に属しない収入を伴う事業運営活動や報酬を受ける活動を許可する制度を設けている。資格外活動許可には包括許可と個別許可があり、活動内容や稼働時間などによって個別の審査が行われる。つまり、入管法は一人の外国人が複数の性質の活動を行うことを一律に禁止しているわけではない。そこで、専門的な人事・会計業務を主たる活動とし、限定的な経営活動について個別の資格外活動許可を受けるという構成が考えられる。ただし、これは現時点で一般的に認められた運用であると確認できるものではない。特に、既存会社の代表取締役として包括的な経営権限を持ち続ける場合、その活動が本当に従たるものと評価できるかが問題となる。参照:出入国在留管理庁「資格外活動の許可」。
3,000万円要件は資格外活動にも適用されるのか
この構成を考えるうえで、最も重要なのが資本金要件との関係である。「経営・管理」の資本金3,000万円要件は、同在留資格に係る上陸許可基準として設けられたものである。一方、資格外活動許可は入管法第19条第2項に基づく別の許可制度である。したがって、経営・管理の上陸許可基準が、資格外活動許可の審査にそのまま当然に適用されるとはいえない。しかし、そこから直ちに、3,000万円未満の会社の経営活動について資格外活動許可を取得できると結論付けることもできない。入管庁は資格外活動としての事業運営について、比較的小規模な活動を想定する一方、法人設立、従業員雇用、事業所設置などを伴う場合には「経営・管理」への変更が必要となる旨の説明も公表している。既存法人の代表取締役が経営活動を継続する場合、この説明との関係を解明しなければならない。問うべきなのは、資本金3,000万円未満という事実だけで不許可になるのか、それとも経営活動の性質、規模、継続性、本来活動への影響などを総合して判断するのか、という点である。
制度の潜脱か、それとも活動実態に即した再分類か
この方法に対しては、経営・管理の厳格化を回避するための制度の潜脱ではないかという疑問が生じるだろう。しかし、制度の潜脱かどうかは、形式的な在留資格の名称ではなく、活動の実態によって判断されるべきである。実際には経営活動が中心であるにもかかわらず、名目上だけ人事・会計業務を主たる活動とするのであれば、適切な在留資格の選択とはいえない。他方、専門業務が実質的に中心であり、経営活動が限定的である場合まで、代表取締役であることだけを理由に一律に排除することにも疑問が残る。入管法が活動に応じて在留資格を区分している以上、複数の活動を行う外国人について、その実態を丁寧に分析することが必要ではないだろうか。
実務上は何を立証すべきか
この構成を実務で検討する場合、第一に、専門業務の具体的内容と実務経験を明らかにする必要がある。第二に、本人がどの程度の時間を専門業務に充て、どのような経営判断を行っているかを整理する。第三に、人事制度設計や財務分析などの専門業務と、採用の最終決定、資金調達、事業方針の決定などの経営活動を区別する。第四に、同一法人との契約関係、報酬の根拠、役員としての権限を客観的な資料で説明する必要がある。なお、就労資格証明書は現在認められている就労活動を証明する制度であり、将来の「技人国」への変更許可を予約するものではない。そのため、就労資格証明書の先行申請だけでこの問題を解決することはできない。また、在留資格変更後に経営活動を継続するには、必要な資格外活動許可を事前に得る必要があり、許可が得られない場合の事業運営体制も検討しなければならない。
入管庁に問うべき法的論点
今後、この構成について入管庁に確認するのであれば、単に「代表取締役のまま技人国へ変更できますか」と質問するだけでは十分ではない。主たる専門業務が「技人国」に該当し、従たる経営活動について個別の資格外活動許可を求める場合、どのような法的要件が適用されるのかを明らかにする必要がある。特に、既存法人の代表取締役としての活動が資格外活動許可の対象となり得るのか、資本金3,000万円要件をどのように考慮するのか、経営活動の主従関係をどのような基準で判断するのかという点である。これらは個別案件の許可可能性だけでなく、在留資格制度の解釈に関わる問題である。
経営・管理の厳格化を、活動分類の再検討につなげる
今回の3,000万円要件の導入は、小規模外国人経営者にとって大きな転換点となった。しかし、この問題を資本金の不足だけで捉えるべきではない。従来「経営・管理」として一括して評価されてきた活動の中には、専門業務として独立して評価できるものが含まれている可能性がある。そうであれば、経営・管理の厳格化は、外国人の活動を改めて分析し、適切な在留資格を検討する契機にもなり得る。もちろん、専門業務と経営活動を分ければ必ず許可されるというものではない。しかし、資本金の額と活動の性質を混同せず、入管法が定める各在留資格と資格外活動許可制度の関係を整合的に解釈することは、今後ますます重要になるだろう。外国人が日本でどのような活動を行っているのか。その実態を正確に捉えることこそが、在留資格制度の本来の出発点である。
