[ブログ]執行猶予付き有罪判決と在留資格――退去強制・上陸拒否の違いと最近の政策動向をやさしく整理

2026-02-02

(はじめに)本記事は、執行猶予付きの有罪判決を受けた外国人の方や、そのご家族・雇用主の方が「いま何が起きていて、これから何に気をつければよいのか」を理解するための一般的な解説です。個別の結論は、罪名や量刑、在留資格、生活状況などによって異なりますので、具体的なケースでは専門家への相談をおすすめします。

1.執行猶予付き有罪判決とはどのような状態か

執行猶予付き有罪判決とは、「有罪であることは確定しているものの、一定期間は刑の執行を見送る」という判断です。実刑ではありませんが、「刑に処せられた」という法的評価自体は残ります。この点が、入管法の世界では重要な意味を持ちます。入管制度では、刑事裁判とは別に、在留や入国の可否を行政手続として判断するためです。

2.退去強制事由の考え方(すでに日本にいる場合)

退去強制は、すでに日本に滞在している外国人を対象にした手続です。犯罪で有罪となった場合でも、直ちに退去が決まるわけではなく、入管による調査や審理を経て判断されます。ここでは、日本での生活年数、家族関係、就労状況、反省や更生の状況など、さまざまな事情が総合的に考慮される余地があります。

現行実務では、執行猶予付きであっても罪名や量刑によっては退去強制事由に該当し得ますが、在留特別許可など、例外的に在留を認める裁量が検討されるケースもあります。「必ず退去になる」「必ず残れる」と単純に言い切れるものではなく、個別事情が大きく影響します。

3.上陸拒否事由の考え方(入国・再入国の場面)

上陸拒否は、これから日本に入国しようとする人、あるいは一度出国して再入国しようとする人に適用されるルールです。ここでは「入口の判断」が重視されるため、退去強制よりも形式的・画一的に判断されやすい傾向があります。

執行猶予付き有罪判決であっても、「過去に刑に処せられたことがある」という事実自体が問題とされ、再入国が認められにくくなる場合があります。そのため、国内に滞在している間は調整や申立ての余地があったとしても、いったん出国すると状況が大きく変わる可能性がある点には注意が必要です。

4.退去強制と上陸拒否の違いをやさしく整理

両者の違いを簡単に言うと、退去強制は「今の日本での生活をどう扱うか」、上陸拒否は「日本に入れるかどうか」という視点の違いです。前者では個別事情をくみ取る余地が残りやすく、後者では入口で一律に線を引かれやすい、という傾向があります。この違いが、当事者にとって大きな不安や判断の難しさにつながっています。

5.読売新聞記事(2026年1月20日)が示す変化の可能性

読売新聞の2026年1月20日付記事では、政府が外国人政策全体を見直す中で、強制送還の対象となる犯罪の範囲を広げる方向性が示されています。これは、治安や国民の不安感への対応を重視する政策の流れの中で位置づけられています。

この動きが具体化した場合、これまで「実刑ではない」ことが一定の歯止めとして働いていた場面でも、より厳しい判断がなされる可能性があります。また、在留特別許可などの裁量判断についても、全体として慎重・厳格な運用に傾くことが考えられます。

6.当事者や関係者が心がけたいポイント

執行猶予付き有罪判決が出た後は、「刑事事件は終わったが、在留の問題は続く」という意識が大切です。安易な出国は再入国のリスクを高めることがあるため、事前に見通しを確認することが重要です。また、反省や再発防止、生活基盤の安定といった点を丁寧に整理しておくことは、将来の判断にとって意味を持ちます。

雇用する企業側にとっても、本人任せにせず、在留継続の見通しや業務への影響を含めた冷静な対応が求められます。

7.おわりに

現行法の下では、執行猶予付き有罪判決の影響は、退去強制と上陸拒否で現れ方が異なります。そこに、政策見直しの動きが重なり、不安を感じる方も多いと思います。大切なのは、早めに情報を整理し、状況を一つずつ確認していくことです。本記事が、そのための静かな道しるべになれば幸いです。

Kenji Nishiyama

筆者:西山健二(行政書士 登録番号 20081126)

外国人の在留資格をサポートしてきた行政書士。事務所サイトでは、在留・入管に関する最新ニュースや実務のヒントを毎日発信中。外国人雇用にも詳しく、企業の顧問として現場のサポートも行っている。