[ブログ]第2回】量的マネジメントの海外例:総量キャップ/配分/運用の「設計」
2026-01-13
量的マネジメントは、単に「人数を減らす」ことではありません。海外の制度設計を見ると、概ね①総量(年間枠・計画値)②枠の配分(技能・家族・人道等)③地域・産業への誘導④運用(審査速度、透明性、説明責任)をセットで扱っています。
1. 豪州:年間の“計画値”を明示し、技能枠を厚くする
豪州は、永住移民(Permanent Migration Program)の枠を年度ごとに計画として示し、技能枠・家族枠などの構成も公開しています。たとえば豪州内務省は「Migration Program planning levels」として2025–26のプログラム構成(技能ストリーム等)を提示しています(Migration Program planning levels)。 こうした“見える化”は、産業側の採用計画や教育・住宅政策との接続をしやすくする一方、景気後退局面では「枠の調整」が政治的争点化しやすい課題もあります。
2. 英国:制度はポイント型でも、実務は“要件引上げ”で流量を絞る
英国はポイント制を掲げつつ、実務上は給与要件などのハードルを上げて流入を調整する局面があります。たとえば英政府はSkilled Workerの最低給与フロア引上げ等を公表しています(Home Office:Review of salary requirements)。 このタイプの量的調整は、制度上は「質の担保」に見えやすい一方、地方・中小企業や賃金水準の低い職種で人手不足が深刻化し、必要人材が採れない副作用が出やすい点が論点になります。
3. カナダ:総量目標と、重点カテゴリ(言語・職種)を組み合わせる
カナダのExpress Entryは、総量(移民受入れ計画)を掲げつつ、カテゴリ別招待で重点領域に誘導します。その一例がケベック州外のフランス語人材の優先で、IRCCも政策目的(少数言語コミュニティの活性化等)を明示しています(IRCCニュースリリース)。 一方、実務の見え方としては、フランス語枠で大規模招待が行われ、最低点が相対的に低い回があるため、英語のみの高得点候補者が“順番待ち”になりやすいという不満が生まれます(招待履歴:Express Entry ITA一覧)。
4. 日本で議論するなら:論点は「総量」より“配分と運用”が先
日本で「量的マネジメント」を掲げる場合、まず必要なのは目的の言語化です。治安・社会保障・教育・住宅・地域コミュニティの負荷を抑えるのか、産業別人手不足を埋めるのか、地域維持(過疎対策)なのか。目的が曖昧だと、総量規制だけが独り歩きし、現場では「必要な人が来ない」「審査が読めない」だけが残りがちです。
また運用面では、(a)統計の整備(在留資格別の流入・転出、就労実態、税社保、地域別負荷)(b)制度変更の予告期間(c)審査・更新の透明性(d)不正・違法の抑止(ここは厳格に)を同時に設計しないと、社会的納得が得にくいでしょう。日経報道(当事務所要約)でも、量的管理が国家として重要なテーマである旨が強調されています(要約ページ)。
次回(第3回)は、「母国語の取得レベル」という言い方の論点を整理しつつ、実務的には各国が採っている受入れ国の言語要件(統合要件)の例、そして導入時の注意点(弱者切り捨て・家族分断・教育格差・差別の助長)をセットで扱います。
