[ブログ]雇用主が注目すべき転換点④ ― データ連携・マイナンバー活用で変わる外国人雇用管理
2026-01-07
本稿は、出入国在留管理庁が公表している2025年版「出入国在留管理」政策および関連PDF資料を踏まえ、雇用主が特に注意すべき制度転換を整理するシリーズの第4回です。今回は、近年急速に進んでいる「データ連携」と「マイナンバー活用」によって、外国人雇用管理の前提そのものがどう変わりつつあるのかを解説します。
従来の外国人雇用管理は「縦割り」で成り立っていた
これまで外国人雇用に関する情報は、制度ごとに分断されていました。在留資格は出入国在留管理庁、社会保険は年金事務所や協会けんぽ、税務は税務署、住民情報は自治体というように、それぞれが独立して管理されており、雇用主としても「制度ごとに対応すれば足りる」という感覚が一般的でした。入管への届出内容と、社会保険・税務上の情報が完全に突き合わされる場面は、これまでは限定的だったといえます。
転換点① 在留カードとマイナンバーの一体的活用
2025年版政策では、在留カードとマイナンバーを軸とした情報管理の高度化が明確に打ち出されています。これは、外国人であっても、日本人と同様に「一元的な個人識別情報」のもとで、就労・納税・社会保障の状況を把握する体制へと移行していくことを意味します。雇用主にとっては、在留資格管理が単独の業務ではなく、労務・税務・社会保険管理と不可分のものになるという大きな転換です。
転換点② 入管情報と他行政機関データの突合が前提に
政策資料では、国と自治体間の情報連携、さらには関係行政機関とのデータ共有が進められることが示されています。これにより、入管への申請内容と、実際の雇用実態(給与額、労働時間、社会保険加入状況、納税状況など)が自動的・継続的に照合される環境が整いつつあります。例えば、フルタイム雇用として在留資格を取得しているにもかかわらず、社会保険未加入であった場合など、従来であれば表面化しにくかった不整合が、制度上すぐに把握される可能性が高まります。
転換点③ 「届出漏れ」「記載ズレ」が重大リスクに変わる
データ連携が進むことで、これまで実務上ありがちだった「軽微な記載ズレ」や「届出の遅れ」が、より深刻なリスクとして評価される可能性があります。意図的な不正でなくとも、情報の不一致が続けば、雇用管理体制そのものに問題があると判断されかねません。雇用主は、外国人従業員に関する情報を常に最新かつ整合的に保つことが求められます。
転換点④ マイナンバー活用は「監視」ではなく「制度前提」
マイナンバーの活用というと、「監視が強化される」という印象を持つ方も少なくありません。しかし政策文書のトーンを見る限り、これは外国人を特別扱いするためのものではなく、日本社会全体の制度設計を外国人にも適用するという意味合いが強いといえます。裏を返せば、外国人雇用についても、日本人と同じ水準の法令順守・情報管理が当然の前提になるということです。
雇用主に求められる実務体制の見直し
この転換を受け、雇用主は外国人雇用管理を「人事・総務だけの仕事」として切り離すことが難しくなります。給与計算、社会保険手続、税務処理、在留資格管理を横断的に確認できる体制が必要です。また、海外本社や外部委託先に任せきりにせず、日本国内での実態把握と責任所在を明確にすることが重要になります。
なぜこれが「従来政策からの明確な転換」なのか
これまでの入管行政は、個別申請を中心とした「点」の管理でした。2025年版政策が示しているのは、データを活用した「線」や「面」での管理です。外国人がどの資格で、どの企業で、どのような条件で働き、どのように社会制度に参加しているのかを、継続的に把握する構造へと変わりつつあります。この変化は、雇用主の実務に長期的な影響を与えるでしょう。
まとめ
データ連携とマイナンバー活用の進展により、外国人雇用管理は「申請が通れば終わり」の時代から、「雇用期間中ずっと見られる」時代へと移行しています。これはリスクであると同時に、適正な雇用管理を行っている企業が正当に評価される環境でもあります。次回は最終回として、これら一連の転換を踏まえ、雇用主が今後どのような姿勢で外国人政策と向き合うべきか、「政策哲学の転換」という観点から整理します。
