[ブログ]雇用主が注目すべき転換点③ ― 在留資格別「企業管理責任」の明確化
2026-01-05
本稿は、出入国在留管理庁が公表している2025年版「出入国在留管理」政策および関連PDF資料を踏まえ、従来の入管政策から明確に転換している施策を、雇用主の視点で整理するシリーズの第3回です。今回は、特定技能、技術・人文知識・国際業務など主要な就労系在留資格に共通して強まっている「企業側の管理責任」に焦点を当てます。
在留資格は「個人の問題」から「企業の管理問題」へ
これまで在留資格の問題は、どちらかといえば外国人本人の責任として扱われがちでした。資格外活動や在留期限超過、不許可となった場合も、企業側は「本人の問題」と距離を取ることができた場面も少なくありません。しかし、2025年版政策全体を通じて読み取れるのは、在留資格の適正運用を企業側の管理責任として明確に位置づける姿勢です。外国人がどの資格で、どの業務に、どの条件で従事しているかを継続的に管理する主体として、企業が想定されています。
特定技能における「支援責任」の位置づけの変化
特定技能制度では、これまでも支援計画の策定・実施が義務付けられていましたが、政策文書では「形式的な支援」では足りないことが示唆されています。生活オリエンテーション、日本語学習支援、相談対応などが実質的に機能しているかどうかが重視される方向です。登録支援機関に委託している場合であっても、受入企業が最終責任主体であるという認識が、より明確になっています。委託しているから安心という時代は終わりつつあります。
技術・人文知識・国際業務における管理責任の顕在化
技術・人文知識・国際業務(いわゆる「技人国」)は、長年「使いやすい就労ビザ」として認識されてきました。しかし近年、この資格についても管理責任の明確化が進んでいます。業務内容が専門性を維持しているか、配置転換や業務変更が適切に管理されているか、長時間労働や名ばかり専門職になっていないかといった点が、企業側の管理事項として見られるようになっています。本人の同意があったとしても、資格趣旨に反する運用は許容されにくくなっています。
高度専門職にも及ぶ「管理と説明責任」
高度専門職は優遇措置が多い在留資格ですが、その分、雇用内容や処遇についての説明責任も高まっています。年収、職務内容、研究・業務成果などが制度趣旨に沿っているかが問われ、形式的なポイント計算だけでなく、実態が伴っているかが重要視されます。優遇資格であっても「自由度が高い」という認識は修正する必要があります。
「把握していなかった」は通用しない時代へ
政策全体から読み取れるのは、「知らなかった」「現場任せだった」という説明が通用しにくくなっている点です。外国人従業員がどのような業務を行い、どのような労働条件で働いているかを、企業として把握・管理していることが前提とされます。これは、コンプライアンス違反時のリスクが高まることを意味する一方、適切な管理体制を整えている企業にとっては、信頼性向上にもつながります。
雇用主が今後求められる実務対応
今後、雇用主には在留資格管理を単なる申請業務ではなく、継続的な内部管理プロセスとして位置づけることが求められます。具体的には、職務内容の定期確認、支援内容の記録化、在留期限や資格内容の社内共有、登録支援機関の業務監督などが重要になります。人事部門だけでなく、現場管理職も含めた体制づくりが不可欠です。
なぜこれが「明確な政策転換」なのか
従来の入管運用は、違反が発覚した後に個別対応する「事後的管理」が中心でした。2025年版政策は、違反を未然に防ぐための「事前的・継続的管理」を企業に求める構造へと転換しています。これは、制度の厳格化であると同時に、外国人雇用を持続可能なものにするための設計変更とも言えます。
まとめ
在留資格別に見たとき、最も大きな変化は「企業がどこまで責任を持つべきか」が明確になってきた点です。特定技能、技人国、高度専門職といった区分を問わず、雇用主は外国人雇用の“管理主体”として位置づけられています。次回は、この流れの中で特に注目される「データ連携・マイナンバー活用と企業実務への影響」について解説します。
