[ブログ]雇用主が注目すべき転換点② ― 在留審査は「形式審査」から「実態審査」へ
2026-01-03
本稿は、出入国在留管理庁が公表している2025年版「出入国在留管理」政策および関連PDF資料を踏まえ、従来の入管運用から明確に転換している、あるいは全く新しい視点が示されている施策を、雇用主の立場から整理するシリーズの第2回です。今回は、近年とりわけ重要性が高まっている「在留資格審査の実態重視化」について解説します。
これまでの在留審査は「形式が合っていれば足りる」世界だった
従来、企業にとって在留資格申請は、いかに要件を満たした書類を整えるかが最大の関心事でした。業務内容が在留資格の範囲に該当していることを文言上整理し、雇用契約書・会社案内・決算書などを揃えれば、原則として審査は通るという感覚を持っていた企業も少なくなかったでしょう。もちろん虚偽や明白な逸脱は問題でしたが、形式的整合性が確保されていれば、実際の業務運用まで踏み込まれるケースは限定的でした。
転換点① 業務内容は「書いてあること」ではなく「やっていること」が見られる
2025年版政策では、「在留資格に応じた活動が適正に行われているか」という点が、これまで以上に強調されています。重要なのは、申請書に記載した業務内容と、現場で実際に行われている業務が一致しているかという点です。たとえば技術・人文知識・国際業務で採用しているにもかかわらず、日常的には単純作業が中心になっている場合、形式上は問題がなくても、実態として不適切と判断されるリスクが高まります。雇用主は、職務内容を「申請用の説明」にとどめず、実際の業務設計と一致させる必要があります。
転換点② 企業の経営実態そのものが審査対象になりつつある
これまでは、会社の登記情報や直近決算書を提出すれば足りるという運用が一般的でした。しかし政策文書では、事業の継続性や組織体制、事業規模と雇用人数のバランスといった「経営の実態」にも目を向ける姿勢が示されています。これは、ペーパーカンパニー的な事業体や、実態に比して過剰な外国人雇用を行うケースを排除する狙いがあると考えられます。雇用主にとっては、外国人を雇用できるかどうかは、在留資格の種類だけでなく、自社の経営体力や組織構造とも密接に結びつく時代になったといえます。
転換点③ 雇用の安定性・継続性が評価要素として浮上
短期契約の繰り返し、頻繁な職務変更、転籍を前提とした雇用などについても、慎重な目が向けられるようになっています。政策全体として「外国人の安定した生活と定着」が重視されている以上、雇用の不安定さはその逆要因と捉えられます。単に法的に可能かどうかではなく、その雇用形態が中長期的に見て合理的か、本人の生活基盤を支えるものかという観点が、間接的に審査に影響する可能性があります。
転換点④ 他制度とのデータ連携を前提とした整合性確認
出入国在留管理庁と他省庁・自治体との情報連携が進む中で、在留申請書類と、社会保険、税務、労務関連の届出内容との不整合は、これまで以上にリスクとなります。たとえば、入管にはフルタイム雇用として申請しているにもかかわらず、社会保険上は短時間就労となっている場合など、形式的な説明では通用しなくなる可能性があります。雇用主には、社内の労務・経理・法務を横断した管理体制が求められます。
転換点⑤ 雇用主は「受動的な申請者」ではなく「制度運用の担い手」へ
政策文書全体から読み取れるのは、雇用主に対する期待の変化です。単に申請書類を提出する立場ではなく、外国人の適正就労を自律的に管理する主体として位置づけられています。これは、違反があった場合の責任が重くなることを意味する一方、適切な管理を行っている企業は、制度上の信頼を得やすくなる可能性も示唆しています。
雇用主が今から取るべき実務対応
この「実態審査」への転換を受け、雇用主は在留資格手続きを人事・総務だけの問題として扱うのではなく、業務設計、組織運営、労務管理と一体で考える必要があります。外国人従業員の業務内容が申請内容と乖離していないか、事業規模に見合った雇用となっているかを定期的に点検することが重要です。
まとめ
在留資格審査が「書類が整っていればよい」時代は終わりつつあります。2025年版政策は、実際の業務・経営・雇用の在り方そのものを問う方向へと明確に舵を切っています。これは雇用主にとって負担増である一方、適正な雇用を行う企業が評価される時代への移行ともいえます。次回は、この実態重視の流れが、特定技能や技術・人文知識・国際業務など、個別の在留資格にどのような影響を及ぼすのかを具体的に解説します。
