[ブログ]銀行が本格参入する「在留外国人マーケット」
2025-12-22
銀行が本格参入する「在留外国人マーケット」
近年、日本国内における在留外国人の増加を背景に、金融機関が在留外国人向けサービスの拡充に本腰を入れ始めています。その象徴的な動きとして、PR TIMESに掲載された記事(PR TIMES掲載記事)では、銀行が外国人顧客を明確な成長市場として捉え、多言語対応やデジタル手続きを前提とした新たな金融サービスを展開している様子が紹介されています。
また、東洋経済オンラインの記事(東洋経済オンライン掲載記事)においても、在留外国人の生活インフラを支える存在として銀行が果たす役割の重要性が指摘されており、口座開設にとどまらず、就労、生活、行政手続と密接に連動するサービスの必要性が強調されています。
金融サービスと在留手続の「接続」が始まっている
これらの記事が示唆しているのは、銀行が単なる金融機関ではなく、在留外国人の日本での生活基盤を支える「ハブ」になろうとしている点です。給与受取口座、送金、住宅、保険といった分野に加え、在留資格や在留期間といった法的地位に関わる情報を、いかに安全かつ効率的に取り扱うかが重要なテーマとなっています。
現時点では、在留資格の更新や変更といった手続は、原則として本人または専門家が出入国在留管理庁に申請する形が主流ですが、将来的には金融機関の提供するデジタルサービスを起点として、これらの行政手続がシームレスにつながる世界が到来することは十分に考えられます。
近い将来、在留期間更新は「オンラインで簡単に」
例えば、銀行アプリ上で在留期限が近づいていることが通知され、必要書類が自動的に整理され、そのままオンラインで在留期間更新許可申請まで完結する、そうした仕組みは決して夢物語ではありません。マイナンバー制度やデジタル庁の取り組みが進む中で、行政手続のオンライン化は確実に前進しています。
このような世界を技術的に支える中核となるのが、「在留手続申請API」です。在留手続申請APIは、民間のサービスと出入国在留管理庁の手続きを安全に接続するための基盤であり、将来のデジタル在留手続を実現するための重要なインフラといえます。
在留手続申請APIという「見えない基盤」
在留手続申請APIについては、デジタル庁の公式ページ(在留手続申請API サービス事業者一覧)において、具体的なサービス事業者が公開されています。ここでは、在留資格に関する申請手続きをオンラインで行うための仕組みを提供する事業者が一覧として紹介されています。
実はこの一覧の中に、私が代表を務めている「株式会社西山知材」が、在留手続申請APIのサービス事業者として掲載されています。これは、将来の在留手続のデジタル化を見据えた取り組みの一環であり、民間の立場から行政手続の円滑化・高度化に関与していることを意味します。
行政手続と民間サービスが融合する時代へ
銀行が在留外国人マーケットに本格参入し、行政手続のデジタル化が進展する中で、在留資格手続は「特別なもの」から「日常的なオンライン手続」へと変わっていく可能性があります。その際、在留手続申請APIを活用したプラットフォームは、金融、雇用、生活支援と在留管理を結びつける重要な役割を果たすでしょう。
今後、銀行や民間企業が提供するサービスを通じて、在留期間更新許可申請や各種届出がより簡単かつ確実に行える環境が整っていくことが期待されます。その基盤の一部を担っていることは、行政書士業務や登録支援機関業務を取り巻く環境の変化を象徴する出来事でもあります。
これからの在留手続を見据えて
在留外国人を取り巻く制度とサービスは、今まさに大きな転換点を迎えています。銀行の動きはその一端に過ぎませんが、金融と行政、そして民間支援が連携することで、外国人本人にとっても、受入企業にとっても、より分かりやすく持続可能な仕組みが実現していくはずです。今後も、こうした変化を注視しながら、実務と制度の橋渡しとなる取り組みを進めていきたいと考えています。
