[ブログ]ポピュリズムを抑える日本の持続可能な移民政策を考える

2025-12-06

Financial Timesの記事では、移民受け入れを巡る「悪循環」から抜け出すために、社会の受け入れ能力と移民流入のバランスを丁寧に調整していく必要があることが示されていました。この記事は、移民政策が単純な賛否では語れない複雑な分野であり、制度設計や社会的な統合のあり方によって、国全体の安定や人々の感情が大きく左右されることを示唆していると感じます。私たちの国でも、人口減少や高齢化が進み、外国人材なしでは成り立たない領域が確実に増えています。そうであれば、ポピュリズムの高まりを防ぎながら、有権者が納得できる移民政策をどのように作っていくかが、これからの日本社会の大きな課題だと思います。

移民政策を考える出発点として

日本では長い間、外国人受け入れが「一時的な労働力」として扱われてきましたが、実際には多くの方が日本で生活し、働き、家庭を作り、子どもを育てています。その一方で、社会の側の受け入れ体制、日本語教育、地域とのつながりづくりなどが追いつかず、誤解や不安が広がりやすい環境を生み出してしまっているように思います。こうした状況が続くと、「なんとなく不安だから反対したい」という気持ちが生まれやすく、それがポピュリズムの温床になってしまいます。だからこそ、最初に必要なのは、目先の対応だけではなく、長い視野で人の移動を捉える姿勢だと思います。

FT記事が示すヒントと日本への示唆

FTの記事では、受け入れのスピードと社会統合の準備とのギャップが広がるほど、国民の不安が高まり、政治的対立が強まるという指摘がありました。日本も同じ課題を抱えていると思います。特定技能や技人国などの制度が拡大する一方で、地域社会の理解やサポート体制はまだ道半ばです。そのため、政策が「いつも場当たり的」に見えてしまい、人々が安心して受け入れられない状況が生まれています。記事を読んで感じたのは、移民政策ほど長期的な視野が必要な分野はないということです。

日本で考えられる持続可能なアイデア

まず考えたいのは、「受け入れる人の区分を明確にする」ということです。短期的な労働力として来てもらう人と、将来的に定住を前提とする人とでは、必要な制度もサポートも大きく異なります。それを最初からわかりやすく示すことで、国民も安心しやすくなります。また、日本語教育や職業訓練などの社会統合の仕組みを充実させることも欠かせません。特に子どもへの教育支援は、日本社会で安定した生活を築くための大切な基盤です。さらに、地方と連携する形での受け入れも重要だと思います。人口減少が進む地域では、若い外国人住民が暮らすことで地域に活気が生まれ、災害や福祉の面でも大きな助けになります。こうした「地域との相互作用」を丁寧に示すことは、国民の理解に大きくつながります。

50年先のビジョンが必要な理由

私は、今の日本に欠けているのは「50年後を見据えた国の姿」だと感じています。人口がどうなるのか、どこで人が暮らし、どの産業が社会を支えているのか、そしてどの程度の外国人が日本を一緒に支え、生活しているのか――こうした未来像を政治のリーダーが示さなければ、国民は移民政策の意味を理解できません。目先の不安ばかりが強調されれば、反対の声が強くなり、議論は前に進みません。逆に、長期のビジョンが明確になれば、移民政策も「必要だから行う」という納得感が生まれ、ポピュリズムにも流されにくくなると思います。

おわりに

移民政策は単なる労働力の議論ではなく、これからの日本社会をどう形作っていくかという大きなテーマです。FTの記事からは、受け入れと統合のバランスを丁寧に取りながら、社会全体が安心できる制度を作る重要性が伝わってきました。日本でも、長期的なビジョンに基づいた、透明でわかりやすい移民政策を作っていくことが、ポピュリズムを抑えつつ持続可能な未来を築く鍵になるのではないかと思います。

Kenji Nishiyama

筆者:西山健二(行政書士 登録番号 20081126)

外国人の在留資格をサポートしてきた行政書士。事務所サイトでは、在留・入管に関する最新ニュースや実務のヒントを毎日発信中。外国人雇用にも詳しく、企業の顧問として現場のサポートも行っている。