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移民白書が高等教育分野と留学生に与える影響

公開日
2025-05-15
メディア
Free Movement
記事要約
イギリス政府の移民白書は、労働者、学生、家族、定住、市民権、亡命制度など、幅広い分野にわたる移民政策の大きな変更を示している。特に高等教育と学生のビザ制度に関する変更は注目されており、政府は国際学生の増加やビザ終了後の滞在継続、そして学生ビザの悪用といった近年の傾向を懸念している。学生ビザを利用して実質的に就労を目的とする人や、ビザが切れた後に亡命申請を行う学生が増えていることが問題視されており、政府はこれに対処する方針を打ち出した。

具体的な変更としては、教育機関に対する規制が強化され、大学が受け取る授業料に対して新たに6%の課徴金(levy)が導入される予定である。さらに、学生スポンサー機関に求められるビザ拒否率、入学率、修了率の基準がそれぞれ5%引き上げられる。この新基準では、過去の実績から22の高等教育機関(約49,000人の留学生を受け入れている)が基準を満たせなかったとされ、スポンサー資格喪失のリスクが高まっている。また、学生募集に使われる海外エージェントに関しても新たな品質基準への加入が義務付けられる。

学生本人への影響としては、卒業後に取得できる「Graduate Visa」の有効期間が、従来の2年間(博士号取得者は3年)から18か月に短縮される。政府はこれにより、学生ビザを労働ビザへの足掛かりとして利用する動機を減らし、より早く技能労働者ビザなど他のカテゴリーに移行することを促進しようとしている。ただし、卒業生の多くが非専門職に就いているという現状に対して、制度の効果は不透明である。

加えて、定住(永住権)に必要な滞在年数も10年に延長され、学生は定住資格取得までの道のりがさらに長くなる。一方で、英語能力の要件は既に学生ビザ申請時に求められている水準と同等であるため、大きな影響はないとされる。

興味深い点としては、イギリス国内の大学卒業生には厳しい制限が課される一方で、海外のトップ大学卒業生を対象とした「HPI(High Potential Individual)ビザ」には拡充が加えられ、利用可能な大学リストが倍増されるなど、制度上の優遇措置が取られている。これにより、イギリスの大学を卒業した学生よりも、海外のエリート大学出身者の方が長く滞在できる「二重基準」が生まれるリスクも指摘されている。
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