[ブログ]在留期間が短くても文化理解は進む。企業ができる小さな支援

2025-11-06

短期的滞在と「溶け込みにくさ」の関係について

ABEMA TIMES 2025-11-01でも指摘されているように、比較的短期の滞在を前提とした在留資格で日本にいる外国人は、そもそも「ここで長く生きていく」という感覚を持ちにくいため、文化や言語を積極的に学ぼうとする動機が弱まりがちです。「期間限定」「いずれ帰国する」という前提があると、どうしても「とりあえず今を乗り切る」方向に意識が向かい、地域社会や日本語の習得が後回しになってしまうのは自然なことだと思います。

自分自身の経験から考えること

実はこれは他人事ではなく、私自身も若い頃に約2年間シンガポールで駐在した経験があります。当時の私は、現地で友人をつくることにも言語を学ぶことにもほとんど力を入れず、むしろ「日本から派遣されてるだけ」「帰国したら元の生活がある」という感覚で過ごしていました。今になって振り返れば、現地の文化や価値観に触れ、もっと積極的に日常のコミュニケーションを取れば、人生の視野は大きく広がっていたはずなのに、自分でその機会を手放していたわけで、正直かなり恥ずかしい記憶です。

だからこそ雇用主が「きっかけ」をつくる意味がある

文化や言語は「学びたい人だけ学べばいい」ものにも見えますが、実際には「学び始めるきっかけ」を提供されなければ動き出しにくい領域でもあります。特定技能を含む外国人労働者が日本で働く場合、多くは日々の業務と生活に追われて文化理解や言語学習に時間を割く余裕はありません。しかし、ここで雇用主が「習得のきっかけ」を制度として用意すると、外国人本人の人生の幅が広がり、会社側にとっても定着率の向上、職場内コミュニケーションの改善、ミスの減少、離職リスクの低減といった形で大きなメリットが返ってきます。

では具体的にどんな支援ができるのか

① 日本語学習の「時間」と「場」を用意する

例:週1回30〜60分の社内日本語ミニ講座、オンライン教材の提供、職場内に「簡単な日本語で説明された作業マニュアル」を置く。重要なのは「本人の自習に丸投げしない」ことです。「業務終了後に自分で学んでね」だと、ほぼ学びは続きません。雇用主が「時間の枠組み」を確保してあげることが効果的です。

② 生活・地域文化の理解を促すガイドの提供

地域のゴミ出し、病院利用、電車の乗り方、防災、コンビニ・郵便局の使い方、近所のおすすめスポットなどを、写真と簡単な日本語+やさしい英語でまとめた資料を作ると喜ばれます。これは「生活のストレス」を減らすうえでも非常に効果があります。

③ 日本人社員との交流を「自然に」生むしかけ

ここが最も重要です。たとえば「交流会」「懇親会」などは心理的ハードルが高いので、もっと自然な接点が必要です。例:休憩中に一緒にできる軽いゲーム、ペア作業のローテーション、小さな成功を共有する掲示コーナーなど。「お互いの存在が当たり前」になる環境づくりがカギです。

滞在期間が短くても「人は変わる」

たとえ滞在が半年〜2年程度でも、文化へ触れた経験は「その後の人生の価値観」に強く影響します。私自身がそうでした。もしあの頃、会社が文化や言語に触れるきっかけを与えてくれていたら、現地の同僚との関係性も、人生の幅も、もっと違った形で深まっていたはずです。

最後に

外国人の文化・言語学習は「本人の努力」ではなく「環境づくり」が決定的です。滞在期間が短いからこそ、その時間は二度と戻りません。雇用主が少し手を差し伸べるだけで、外国人本人にとっても、企業にとっても、地域社会にとっても、その時間は大きな価値を持つものになります。

Kenji Nishiyama

筆者:西山健二(行政書士 登録番号 20081126)

外国人の在留資格をサポートしてきた行政書士。事務所サイトでは、在留・入管に関する最新ニュースや実務のヒントを毎日発信中。外国人雇用にも詳しく、企業の顧問として現場のサポートも行っている。