[ブログ]特定技能の合格証書偽造が増えている件と雇用主のチェック手順
2025-10-27
ニュースの紹介と問題提起
最近、技能試験の「合格証書」を偽造して在留資格「特定技能」を不正に取得しようとした事件が報じられました。大阪府内で偽の合格証書を用いて在留資格変更の申請を行った疑いで逮捕者が出た、という事例です(報道:関西テレビ)。このケースは、単なる悪用の一例にとどまらず、雇用側にも証明書の真正性を確認する責任とリスク管理が求められることを改めて示しています。
特定技能取得に必要な試験の概要
特定技能1号の在留資格を得るには、大きく分けて「日本語能力を示す試験」と「分野ごとの技能評価試験」の両方に合格していることが基本要件です。日本語については、JLPT(日本語能力試験)のN4相当またはJFT-Basic(日本語基礎テスト)などで基準を満たす必要があり、分野によってはさらに専用の日本語評価が求められる場合があります。また技能試験は飲食、介護、建設など各産業ごとに実施される評価試験に合格することが求められます。これらの制度や試験の位置づけは出入国在留管理庁や関係省庁の案内にまとまっています。
なぜ雇用主が証明書の真正性を確認する必要があるのか
雇用主が偽造の合格証書を見逃すと、結果的に不法な在留資格で雇用してしまうリスクがあり、行政処分や信頼低下、最悪の場合は刑事事件の関与を疑われる事態につながります。報道にあるように、偽造が摘発されると本人だけでなく、供与経路の調査や関係者への捜査が進むこともありますから、雇用主としては採用時に最低限の確認プロセスを整備しておくことが重要です。
現場でできる、やさしく実行できる確認手順
まず、候補者からは「原本」を必ず見せてもらい、写真やコピーのみで済ませないことが原則です。原本と在留カード、旅券などの本人確認書類を照合し、氏名・生年月日・証書の発行日や試験番号が一致しているかを確認します。次に、発行機関の名称・連絡先を控え、公式ウェブサイトでその発行様式(見本)や合格証明の確認方法が公開されていないかを調べます。多くの試験運営団体や特定技能の試験実施団体は、合格者リストや照会窓口を持っているので、疑わしい点があれば直接問い合わせて確認すると良いでしょう。
具体的な確認方法
1) 原本照合:合格証書の原本を見せてもらい、偽造の疑いがある不自然な文字や不揃いな印影がないかざっと観察します。2) 身元確認:在留カード・旅券の氏名や生年月日と合格証書の記載が合うかを確認します。3) 発行元へ照会:合格証書に記載の試験名や受験番号を基に、試験団体や運営事務局に照会して合否事実の確認を依頼します。連絡方法が明示されていない場合でも、出入国在留管理庁や分野ごとの主管省庁の案内ページから正規の問い合わせ先を見つけられることが多いです。4) デジタル照合:一部の試験は合否をオンラインで照会できるシステムを提供しています。技能試験や日本語試験の公式サイトで確認できるかをチェックしてください。
疑わしいときにとるべき対応
もし証明書に疑義がある場合は、まずは内々に発行元に照会したうえで、候補者に事情を説明して協力を求めます。悪質な偽造が疑われるケースでは、雇用主としても記録(やりとりのメール、照会結果の写しなど)を残しておくことが重要です。必要に応じて、登録支援機関や外部の行政書士・社会保険労務士などに相談して手続きを進めると安心です。また、不正が確定した場合は速やかに関係当局へ報告・協力する姿勢が企業側の信頼維持につながります。
採用フローに組み込むと安心な仕組み(小さな工夫で大きな効果)
採用時チェックの標準化をおすすめします。例えば「応募受付→書類提出(原本)→HRによる原本照合→発行元照会(必要時)→最終雇用判断」という流れを社内ルールにしておくと、担当者ごとのバラツキが減ります。さらに、過去に技能実習生として在留していたかどうかを確認できる書類(修了証など)があれば、それも合わせて提出してもらうと履歴の整合性が取れやすくなります。外部の登録支援機関を活用すると、受入れ義務や支援計画の点でも助かります。
実務でよくある疑問に簡単回答
「コピーでも良いですか?」→原本必須と考えた方が安全です。「発行元に連絡しても教えてくれないことはありますか?」→個人情報保護の関係で照会に手続きが必要な場合がありますが、運営側が合否の当否自体を確認してくれることは多いです。「技能実習の修了で試験免除になるって聞いたが?」→一定条件下で技能実習2号を良好に修了した人は試験が免除・免除相当となる運用があるため、在留歴の確認も合わせるとよいでしょう。
最後に:雇用主としての心構え
今回の報道が示すように、合格証書の偽造は現実のリスクです。とはいえ過度に疑い深くなる必要はなく、「ルールを決めて、やさしく丁寧に確認する」ことが最も実務的で安全な対応です。社内の手順を整備し、必要に応じて外部の専門家に相談することで、適法かつ安心して特定技能外国人を受け入れることができます。万が一不正が見つかった場合は、速やかに関係機関と連携する姿勢が企業の信頼を守る近道です。
